国立成育医療センターの調査で、1970年代生まれの人の約9割が、ダニやスギ花粉などでアレルギーを起こしやすい体質であることが分かりました。アレルギー患者が多いとされるニュージーランドでも6割ですから、この数字は世界的にも例のない高率です。
日本では70年代に乳幼児を取り巻く衛生環境が劇的に改善しており、それが背景にあるのではないかと考えられています。つまり、衛生的な環境で育った乳児ほど、将来的にアレルギーになりやすいというものです。
生まれてくる赤ちゃんがアレルギーになるからと、いままで一緒に暮らしてきたペットを手放しなさい、あるいは遠ざけなさいと助言する人がいます。ところが、そういった考え方を全く覆す研究結果が発表されました。
米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)と国立環境衛生科学研究所(NIEHS)によって、と報告されたのです。
更に、米国立アレルギーメカニズム局からは、「幼い時期にペットと多くかかわりを持つことが、ペットに対するアレルギーを防御するだけではなく、ダニ、ブタクサなどによる他の一般的なアレルギーに対しても有効と考える」
という報告もされました。
何らかのアレルギー症状が出て、病院に行くと、「ペットを飼っている」と言っただけで、動物アレルギーとか猫アレルギーという診断をされることもあります。
それまでずっとペットと暮らしてきた人がある日突然、動物アレルギーになる、あるいはアレルギーがひどくなるということはありません。疲れからくる体力や免疫力の低下、ストレス、室内のホコリやダニなど、違う原因が複合的に作用している可能性が高いのです。
ペットを手放さなければならないのかと悩む前に、病院で検査を受け、症状の原因を突き止めるとともに、生活環境、居住環境を見直してみましょう。
犬が最もかかりやすい病気は皮膚病ですが、中でもアレルギー性皮膚炎が増えています。
犬も室内で飼育されるようになってから、人と同様にハウスダストと呼ばれる室内のホコリに含まれるダニやその死骸、フン、植物の花粉、カビなどを原因(アレルゲン)とするアレルギー性の皮膚炎にかかってしまうようになったのです。
ホコリは床から30センチぐらいにところに浮遊しやすいので、犬はそれを吸い込みやすいからだとも言われます。
アレルギーの原因物質としてはハウスダストマイトと呼ばれるホコリの中のダニがトップで陽性率50%、次いで植物が40%、ストレージマイト(貯蔵フードに発生しやすいダニ)20%、ノミ14%となっています。犬の飼い主がいちばん気にする食物アレルギーは13%程度で原因としては高いものではありません。ただし、アレルギーを発症するのはそれらの原因がいろいろと組み合わさったためと言われます。
アレルギーの原因物質=アレルゲンとなるものには、ハウスダスト、カビ、ダニ、花粉、煤煙など、生活環境にある全てのものが含まれ、その一部として犬や猫の毛やフケも加えられます。
それらの中でも、アレルギーの原因として最も影響を与えるものが、ダニの死骸やフンです。ホコリの中のダニは1g中に1,000~2,000匹もいると言われます。その死骸やフンの粉末が呼吸とともに身体に取り込まれて、人間には喘息やアレルギー性鼻炎、犬にはアレルギー性皮膚炎の原因になります。
ホコリダニ、チリダニと言われている「コナヒョウダニ」と「ヤケヒョウダニ」がアレルギーの原因の8割を占めています。これらは、ふとん、じゅうたん、畳、布製ソファー、ぬいぐるみ、タンスと壁の間にたまった綿ボコリなどに多く生息します。
梅雨の季節はダニが猛烈に繁殖する時期です。ダニは約1ヶ月で卵から一人前になり、寿命は2~3ヶ月ですが、その間に約100個の卵を産みます。ダニにとっての好環境下では、3ヶ月足らずで1匹から6億匹まで増殖することになります。
アレルギーの原因を回避する有効な方法のひとつが、ダニの繁殖を阻止することで、そのためには、部屋の換気とホコリを取り除く掃除が大切なのです。