子どもが犬を欲しがったときに、多くの親は「おまえがちゃんと世話ができるのなら・・・」と言って、子どもの自己責任を約束させます。
しかし、子どもにせがまれて犬を飼い始めたとしても、子どもに犬の世話をまかせきりにしてはいけません。子どもの多くは、最初だけは犬に夢中ですが、すぐにあきてしまいます。また、子どもは自分の感情をコントロールする自制心も未熟で、気分次第の安定しない接し方をすると、犬は混乱してしまいます。
子どもが担うことのできる責任には限界があり、まだ精神的にも肉体的にも未熟である子どもに、ペットの全てをまかせるような考え方はいけません。いっしょうけんめいな子どもであってもペットの世話がたいへんになる時期がきますから、様子を見ながら、無理をさせないように少しづつ責任の範囲を広げていきます。
そして、子どもができない部分は親がカバーしなければなりません。親がしっかりやっている姿を見せることで、子どもは責任とは何かを学ぶことができるのです。大人の家族と一緒にペットの世話をすることが子どもにとっては喜びにもなります。
親が、子どもに能力を超えた責任を無理やり持たせようとしたり、子どもと動物の関係を壊したり、動物が病気や死を迎えた時、子どもが心配しているのを無視したりするようなことをしてはいけません。
子どもへの犬の咬みつき事故でもっとも多いのが、飼い犬によるものです。5歳から9歳ぐらいまでの子どもが最もリスクが高いと言われています。それは、次のような理由です。
1. 子どもは、犬が噛みつく前に示す唸り声やボディ・ランゲージを理解していない。
2. 子どもは、食餌中の犬に近づくと攻撃されることを知らない。
3. 子どもの声や行動が犬の攻撃的な行動を引き出す。
例えば、犬には「服従の笑い」と呼ばれる表情があります。くちびるを水平方向に引いて、歯がむき出しになります。それは攻撃に移るシグナルですが、幼い子どもにはわかりません。
赤ちゃんや幼児のむじゃきな行動でも、それが犬にとっては脅威に感じるもので、かみつかれることがあります。乳幼児のいる家庭では、次のような注意が必要です。
1. 赤ちゃんと犬だけにしてはいけません。
赤ちゃんがバタバタ足を動かしたりすると、その動きが犬にとっては魅力的な遊びに感じて、ふざけて爪をたてたり、咬んだりすることがあります。また、赤ちゃんが犬を強くつかんだり、抱いたりしたために、嫌がった犬に咬まれることもあります。
2. 子どもに犬を触らせるときには、大人が犬を抱っこして。
まず、大人である飼い主が犬を対面する形でだっこします。そして、子どもには、犬の背中をなぜさせるようにします。いきなり、頭の上に手を出したりすると、犬がびっくりして手にかみついたりするかもしれません。
3. 子どもに犬の顔をのぞき込ませない。
犬に対して正面から近づいたり、顔をのぞき込んで、凝視する行為は、犬にとっては脅威になります。身を守るために、吠えて追い払おうとしたり、かみつくといった攻撃的な行動を起こすことがあります。
4. 犬が休んでいるときや食餌中は、かまわないで。
犬がハウスでゆっくり休んでいるときや、食餌をしているときには、子どもが手を出したり、むやみにかまったりしないよう、注意をして下さい。犬はじゃま者を追い払おうとして、威嚇したり、かみついたりすることがあります。
5. 大声で騒いだり、かけまわったり、犬をいじくりましたりしないように。
子どもが騒いでかけまわったりすると、興奮した犬は追いかけてかみつくかもしれません。かわいいからと子どもが犬をいじくりまわすと、それがストレスになってかみついたり、元気を失くしてしまう原因になったりします。
6. 友だちと一緒にあなたの子どもが遊んでいるときには、激しい遊びはさせないで。
自分の家族である子どもが友だちにいじめられていると感じた犬が、その友だちを脅したり、咬みつくことがあります。子どもを守ろうとしているのです。
日本では、「犬は咬んだり引っかいたりする危険な動物だから、そのようなことが起きないように注意しなさい」と子どもに教えます。欧米では、「犬は臆病だから、怖がらせないないように犬の気持ちを考えて、接してあげなさい」と教えます。