ふと、かつて習った舞踏が気になり、調べてみると、今年初めに師が亡くなっていたことを知りました。大野慶人先生です。
国際的に活躍された先生についての想い出を振り返りつつ、書いてみたいと思います。
彼は、舞踏の第一人者である父の大野一雄氏や土方巽氏とともに、舞踏を世界に広めてきた、日本の代表的存在と言ってよいのかと思います。
そんな慶人先生は、広く門戸を開放し、横浜で定期的に稽古を行っており、幸運なことに、かつて私も参加することができました。
先生の稽古には世界各国から人が訪れ、私が参加したときには外国の方が半分以上だったように思います。
先生は特段英語が流暢なわけではなさそうでしたが、日本語のわからない彼らに、要所要所自分の言葉で、英語で伝えていました。
決して多くの言葉を語っていたわけではありませんし、ましてやほとんどが日本人でも簡単に理解できないかもしれない精神論的なものだったにも関わらず、海外の方たちはそんな先生から終始とても真剣に学び取ろうとしていたのを覚えています。
世界にはまだまだ日本に対する見下しや偏見などがある中、こんなふうに国境を越えて海外の人をも魅了し、わざわざ遠方から習いに来られるような存在は、なかなかないのではないかと思います。
お会いできたのはほんの数回でしたが、先生のお人柄はよくよく伝わってきて。びっくりするほど謙虚で、心静かで、丁寧で、存在がとても優しい方でした。それでいてとってもキュートで![]()
お稽古では、「紙一重」について、ティッシュペーパーや生糸を使って示唆を与えてくださったり。
「舞踏とは、命を大切にすること」ということを、身をもって教えてくださいました。
そして先生の舞踏は、魂のダンス。少し動いただけで、感動して涙が出たものでした。魂というのは、垣根を超えて人の心を揺るがし、伝わるものなのですね。
まだまだ色々お話をお聞きしたかったですし、また先生から習いたいと思っていたので、お亡くなりになられたのはとてもショックです。
ですが、少しでも空間を共にできたこと、教えていただけたこと、先生の漲る命を感じられたことを、とても幸せに思います。
2014年9月 草月ホールにて行われたシンポジウム『身体表出の日本的特徴』での大野慶人先生。
この時本当はトークのみということで踊りは予定になかったのに、結果的にほとんど自らの身体を使って伝えてくれました。最後は時間がオーバーしているにも関わらず、先生らしい素敵なマイペースで人形を取り出しこれを見せてくれたのでした。
この人形は、亡くなった先生のお父様である大野一雄先生なのだと以前に先生が仰っていましたが、本当に命が吹き込まれているように見えるからすごいです(画像が荒くてごめんなさい
)。人形に魂が入っているよ…。
慶人先生と。
この時がお会いした最後になってしまったけど、感動した気持ちをそのままお伝えすることができて、よかった。
またお会いしたいな![]()
