鳥羽港の先に鳥羽水族館があった。月曜日にもかかわらず、海の博物館とは対照的に多くの来館者で賑わっていた。

 駐車場は満杯で、自転車を駐輪場の隅に置いて入館する。料金は大人2,800円。

 水族館から見た真珠島。今回はスルーしたが島内には真珠博物館もある。島の周りの養殖筏は、牡蠣かアコヤ貝か?

 さすが、伊勢湾に近いだけあって青い伊勢エビかと思ったら、マロンという淡水に生息するザリガニでオーストラリアからやってきたらしい。マロンという名前は褐色の個体がマロニエのような色なので名付けられたという説がある。体長30cm以上に成長するため食用として養殖している国もあるそうだ。他にも多種多様なザリガニが展示されていた。

 リクガメの展示。手前の大きいのは、ケズメリクガメ。サハラ砂漠の南側のサバンナに生息する植物食のカメだそうだ。奥にも別のカメたちがいる。

 奇跡の森エリアのスナドリネコ。南・東南アジアに広く生息するヤマネコの仲間で、野生では沼地や河辺に生息している。前足の指の間には水かき状の膜があり、水に入って魚を捕ることもある。「漁り猫」と書くほど漁が得意だ。

 いがらしみきお氏の漫画「ぼのぼの」にも登場し、豊富な知識とどこか世捨て人のような雰囲気が魅力的なキャラクターだ。ムーミンでいえばスナフキンに近い存在だろう。ちなみに「ぼのぼの」はラッコの子供なので、スナドリネコさんは、ずいぶん遠くから流れてきたことになる。

 海獣への餌やり。お客さんと動物との距離が近い。触っている人もいる。

 オレンジ色だけどグリーンイグアナ。植物食で中南米の熱帯雨林に広く生息し、最大全長180cmにもなる個体もいるらしい。そういえば、今では知的なイメージが強いが、若かりし頃のタモリさんのイグアナのモノマネはすごかった。

 アフリカマナティーの「みらい」。アフリカ西海岸に沿って分布していて、大きな河口域などに生息しているが、河川や内陸の湖沼などにも生息している。主として草食性で、水生植物を食べるが、陸生の植物なども食べる。鳥羽水族館には、2024年7月まで「かなた」という雄のマナティーがいたが亡くなり、現在は雌の「みらい」だけになっている。

 愛嬌のあるカピバラとショウジョウトキのツーショット。カピバラは現生のげっ歯類の中で最大の種でアマゾン川流域を中心とした、温暖な水辺に生息している。ショウジョウトキは南アメリカの北部沿岸部に生息し、水生昆虫や魚、貝などを食べる。

 鳥羽水族館と言えばラッコが売りだが、最初に見たときは40分待ち、次に見たときには60分待ちになっていた。あきらめて、ソフトクリームを持ったラッコを撮影。

 ついでに、入り口のラッコも撮影。

 エントランスホールの大水槽の中には、アクアラングを着けたスーツ姿の5人が一列に並び、なにか宣言めいたことを言っていた。後で伊勢市の宿でテレビを見て知ったが、鳥羽水族館名物の「水中入社式」だったらしい。せめて写真を撮っておけばよかった。

 鳥羽水族館を出て、国道167号線で伊勢市を目指す。鳥羽駅を過ぎるとしばらく海沿いの平坦な道が続き、二見町に入ると一度内陸へ入る。

 やがて蘇民と書かれた看板が見えてくる。

「民話の駅 蘇民」の駐車場と看板。蘇民とくれば蘇民将来のことだろうか。

 店の入り口。「祝お木曳」の幟がある。お木曳とは20年(次は2033年)に一度、社殿を新たに造営する「神宮式年遷宮」のための御用材を伊勢神宮に引き入れる行事で、2026年と2027年の5〜8月に実施される

 店内は二見町でとれた野菜や水産品、惣菜やパンなどが並ぶ小さな道の駅といった感じである。研修室では盆栽の展示があり、地元の人数名が話し込んでいた。

 店内には蘇民将来に関するものは見いだせなかったが、再び入り口の上を見ると注連縄に「蘇民将来子孫家」の木札。やはり関係あるのは間違いなさそうだ。

 「民話の駅 蘇民」の隣には神社があり、鳥居横の石柱には松下社と刻まれている。ここに蘇民将来に関するなにかあるのではないかと思い参拝した。

 由緒正しそうな神社だ。

 祭神はなぜか菅原道真公、それに素戔嗚尊、さらに、不詳一座という謎の神様。蘇民将来の伝承は『備後国風土記』に見られる。旅の途中の武塔神(むとうのかみ)が蘇民将来の弟で、裕福な巨旦将来に宿を求めるが冷たく追い払われ、次に蘇民将来に宿を求めた。蘇民は貧しいながらも武塔神を手厚くもてなした。武塔神は「来年、疫病が国を襲う。お前たちは茅(ちがや)で輪を作り、腰につけよ。それが災厄から身を守る護りとなる。」と言って去っていった。予告どおり疫病が流行し、茅の輪を身につけていた蘇民将来一族だけは無事で、巨旦将来の家族は全滅してしまった。

 ここで、武塔神だが、素戔嗚尊と同一視されるようになっているので、蘇民将来との繋がりが見て取れる。

 松下社の大クス。樹齢は2000年とも言われ、三重県の天然記念物に指定されている。

 その後、調べたところ、松下社境内には蘇民社が祀られており、完全に見落としていた。

 「備後国(今の広島県の東半分)風土記」に登場する蘇民将来が三重県に登場する謎については、「民話の駅 蘇民」のHPに答えが書かれていた。それによると二見町松下地区に伝わる「牛頭天王儀軌之事」という1620年に書写された巻物に蘇民将来の話が出てくるらしい。民話風にまとめられているが宿を求めたのは午頭天王で祇園精舎の守護神とされ、日本における神仏習合の神である。午頭天王が竜宮城に嫁を貰いに行く話や宝物の玉を蘇民に渡して、その力で8年後に長者になった事、巨旦将来に悪いことがおこったが、疫病の話がないこと等相違点がある。ただし、午頭天王が素戔嗚尊と同一視されていることから、大枠では備後国風土記と合致する部分は多い。三重県伝わる間に細部が変わっていって「牛頭天王儀軌之事」に記録されたのかもしれない。午頭天王を祀る祇園社、天王社は明治維新の神仏分離によって素戔嗚尊を祭神とする神社として強制的に再編されたらしいので松下社も以前は祇園社だったのだろうか。

 

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