PARCOプロデュース作品『ホームレッスン』

谷碧仁 作
シライケイタ 演出

中学教員の大夢は婚約者の花蓮と2ヶ月ぶりに連絡がとれ、花蓮の家族に会いに行く。
花蓮の実家には色んなルールがある。少し変だと思いつつも、施設で育った大夢には、普通の家族というものが分からない。
分からないことだらけの大夢は、これまでも適応していくことで「分からない」を封印してきた。

花蓮の実家で暮らし始めたある日、物置部屋で、鎖に繋がれ汚れた青年を見つける。花蓮の弟・朔太郎だ。1年半も監禁されている。三上家のルールと懲罰が記された家訓のせいで。
一瞬、幼少期の自分と重ね合わせ普通の人間らしさを見せるも、繋がれた鎖は愛情表現だ!と、人権侵害も甚だしい家訓に適応していく。


主演の田中俊介くんは、ご当地アイドルグループ・ボイメン元メンバー。当時のキラキラ感を封印して等身大の大夢を演じる。
施設育ち、教育者、自己のない人間性と真っ直ぐな人間性、ルール狂信者、母への愛など、自己に内在する様々な人間性を、膨大なト書とともに2時間ノンストップで語り続ける。

家訓を作った花蓮の母・宮地雅子さん。小柄なのにそこから放たれるパワーが半端ない。
かつて中学教員で、子どもたちの自主性や可能性を信じ、自由に生きることを尊重していた。今は家族を守るためのルールを作り、遵守させることに人生を掛けている。

社会派ドラマや映画に欠かせない堀部圭亮さんは物静かな花蓮の父。期待を裏切らない存在感。

ごく普通な花蓮の武田玲奈さんも、イマドキ風でもあり、瑞々しい現代女性でした。


そして、FANTASTICSのパフォーマー堀夏喜くん。
最近ドラマにもご出演のようですが、監禁された弟・朔太郎役。
中盤まで出番はないうえに、いきなり監禁された人物として登場。順応ではなく自由を求めただけの多感な時期の抑圧された青年を、すべて封印して強い信念を醸し出さねばならない難役を見事に演じていた。
いつの間にこんなに上手くなってんの?
ホリナツくんの素直な人間性は、海綿体のごとくどんどん吸収して、自己の中で咀嚼して、自分のものにしてるのでしょうね。


たった5人、2セットだけで魅せるサスペンス風人間ドラマは素晴らしかった。


谷碧仁さんの戯曲、脚本は凄すぎる!

倉持裕(ペンギンプルペイルパイルズ)
上田誠(ヨーロッパ企画)
この2人を凌ぐかのごとく素晴らしい劇作家だ!!


ずいぶん前に、「性善説の上で成立する教育なんて意味があるのか」と言い出した仕事仲間とホンネバトルしたことを思い出した。

人間が壊れていく恐怖に心が痛くなり、ラストの朔太郎に救われ、じわじわと、しかし止める手段がないほど涙が溢れた。

甘い焼き芋プリュレフラペチーノは、少し興奮気味の気持ちをとても優しく日常に戻してくれた。



紀伊國屋ホールって何年ぶり?
まさか2010年夏に解散したM.O.P以来?