(以下は個人情報保護のため、全体に影響のない細部を変えてあります)
催眠状態に誘導する前に、最初にカウンセリングをするのだが、その時も、お父様の話しになると、涙をとめどもなく流されていてる。
すでに20年という月日が経っていることを考えると、いつまでも癒える様子のない、この悲しみ方は尋常ではないことがわかった。
なので、前世療法の前に、お花畑のワークと呼んでいるワークをしてみることにした。
退行催眠状態にして、お花畑のある美しい風景の中に誘導する。
ーーお花畑の中に椅子が2つあります。
その椅子の1つに今、あなたが座っています。
お花畑と椅子は見えますか?
「はい、辺り一面、黄色いヒマワリが咲いています。黒いパイプの椅子に腰かけています。
ーーこれから1から5まで数字を数えると、あなたにメッセージのある方が隣りの椅子にいらっしゃいます。
1.2.3.4.5
どなたか来ましたか?
「父方のおばあちゃんがいます。」
ーーどんな様子ですか?
「私の知っていてる祖母よりずっと若い感じです。キチンと着物をきています。」
ーーお祖母様は何かおっしゃっていますか?
「息子(この患者さんの亡くなったお父様)の代わりに自分が先に身代わりになっ
死ねば良かった。そうしたら、お前にこんな悲しい思いをさせずに済んだのに。と、言っています。」
ーーお祖母様、お優しいかたですね。お祖母様にお父様は元気か聞いてみてください。
「はい。
あ!お父さんがでてきた!
お父さん!お父さん!お父さん!お父さん!
(ここで患者さんは非常に、興奮して「お父さん」を連呼して、絶叫する。)
ーーお父様は何かおっしゃっていますか?
「‥‥‥。
(しゃくり上げながら)
何も言ってくれません。
ただ、笑っています。」
ーーじゃ、なにか、お父様に、言いたいことがあったら言ってみてください。聞きたいことを聞いてみてください。
「お父さん!どうして、あんな若くして死んじゃったの⁈お父さん!会いたい、会いたい!
お父さん!会いたい会いたい!」(と泣き叫ぶ。)
ーーお父様は何かおっしゃっていますか?
「‥‥‥。
何も言ってくれません。
ただ、ニコニコしているだけです。」
ーーお父様はどんなご様子ですか?
「白いポロシャツに茶色のチノパンです。
額の生え際の真ん中から少し左側に、筋のように白髪があります。」
そう言ってくれている間にも嗚咽が収まらず、かなり興奮している様子なので、そのまま前世に進むのは諦めて、一旦催眠を解くことした。
ーー(患者さんが興奮して泣いて咳き込んでいるので)大丈夫ですか?
お花畑からお花を摘んで、花束を作ってください。それをお父様に感謝の気持ちをこめて渡してください。
お父様は帰られますので、さようならを言ってください。
「渡しました」
ーーお父様はどんなご様子ですか?
「何も言いません。ただニコニコして受け取りました。」
ここで、予定を変更して催眠を解いた。
お父様のメッセージを受け取れなかったし、患者さんが興奮し過ぎて、前世療法に進むのは心配な感じで、もう催眠を解かないといけない。
うまく行かなかった。と私はがっかりしていた‥。
ところが、患者さんは、
催眠を解かれて、気持ちが静まると、見違えるようなさっぱりした明るい表情でおっしゃった。
「私、わかりました!」
ーー何がわかったのですか?
「お父さん、ずっとニコニコ笑ってた。
だから私も、泣いていちゃいけないって、なんかストーンとわかったんです!
今まで、毎晩、お父さんのことを思って泣くのが日課でした。
でも、お父さん、ずっと笑ってた!
私も泣かないで生きなきゃいけないって、なんか、わかったんです。」
前世療法を通して、ソウルメイトであるはずのお父様と何度も過去世で一緒だったことを経験してもらい、この人生が終わっても会えることを経験してもらうことで、傷を癒してもらおう、と思っていた、私の予定通りには行かなかった。
けれど、
大好きなお父様のニコニコ笑顔がこんなにも、彼女を癒してくれたのだった。
私まで、感動につつまれたセッションでした。