天使が仕事のために地上に行くときは、危険と隣り合わせだ。


空には天から降りてくる天使を狩ろうと、魔物がいる。天使狩りだ。



襲われた場所が天に近い空なら天に引き返すけど、道半ばの中間で襲われると、戦うしかない。相手はそれを知っていて、天に近い所で狙いはしない。





そして、魔物は天使の翼の大きさで獲物にするか決める。そもそも小さな翼の天使は地上に行く仕事はこないから、空を行く天使はあるレベルにあると分かる。女子より男子、更に大きな翼になるほど、獲物の格は上がる。希に最上位である極彩色の翼の天使が絡まれて手こずっているものなら、ハイエナよろしくあっという間に群がり、獲物を奪いあう。




極彩色の翼の天使が狩られたなど聞いた事がない。苦戦と見せかけ、一蹴だ。





男子で腕に覚えがある者は武器を携帯していく。魔物との接戦は劇画並みの戦いぶりだけど、そんな場面を見ても女子は巻き込まれないよう、そっと通り過ぎる。


女だてらに手助けしようものなら「女は出てくるな!」と恫喝される。






問題は女子だ。



私は物怖じしない性格だったけど、丸腰。
翼の大きな女子は意気がる魔物の格好の標的になった。





なので手を出されたら、相手を見極めて最善を尽くす。ちょっかいを出す程度なら猛スピードで地上に向かい、振り切る。あまりにしつこいと、ショックを与えて感電状態にする。





接戦になると命の危険があるから、なるたけ早く切り上げたいものだ。相手が去るまでショックを与え続けるのはかなり気力を消耗してしまう。たまにはそんな状態を見た通りすがりの天使が助けてくれなくもないけどね。






私達はこんな時、仲間なら助けて当然という考えを持っていない。自分で何とかするのが当たり前だ。気が向いたり、自分に余裕があるなら助けに行く。






助けたい。動機が義務でないなら動く。
そう思えなければ、助けない。
(今はやりの「自分軸」の究極のあり方だ)











何回か地上に行き来していると、魔物に記憶される。特にやっかいなのは「この間は仲間をイタイ目にあわせてくれたな!」と因縁をつけられることだ。冗談じゃない。




こんな事を意気がってるレベルは、イタイ目にあった仲間と変わらない。バカバカしくてまともに相手をしようとはならない。さっさとイタイ目にあわせて、地上に向かう。








仕事で疲れるより、こんなのを相手にして疲れるのは割に合わない。死ぬかもしれないのに。

以降、私は地上に行く仕事を断り続けた。








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