粗筋/地球に生まれる子供達が暮らす、お空。
私は生まれたいお母さんがなかなか決まりませ
ん。担当の天使はあるお母さんを強く勧めま
す。
天使は「心の底はあの人は本当は優しい、イイ人なのです、家族みんなに大切にされるから生まれるといいですよ」と勧めます。
天使がその家を良く見たという感想を聞き、それならばいいかと思ったんですね。彼女とは仲良くないけど天使だからウソは言わない、家を見てきたならば言うとおりだ、信じようと思いました。
そして、とうとうあの人(お母さん)に決めたのでした。
天使はそれ以来私に優しくなりました。神様に認められて生まれるお許しがあっただの話す様子は鬱陶しいくらい親切でした。周りの子も次々に生まれる家が決まり、どの天使もいつになく慌ただしくしていました。
ある日1人で砂遊びをしていたら、天使が来ました。天使が話しかけても、遊ぶ手を止めずにいました。また他愛ない話をしに来たんだと思ったんですね。すると、お母さんのお腹の赤ちゃんが大きく育ったから、あなたももうお腹に入りましょうと言われました。
こうした驚く話が突然くるのは、ここでは当たり前でした。
(今日なのか~砂遊びの最中なのに)
「作ってるのが出来上がってからでもいいですか?」
「あとすこしだけなら。もうここでそうして遊ぶ事はありませんから。」
トゲのある言葉にムッとしました。なのでわざと丁寧に砂遊びを完成させようと思い付きました。天使は黙ってその様子を眺めていました。
やがて完成したのを私はじっと見つめました。悲しみがじわりときました。
もうこうやって遊べない。楽しい遊びも、さよならなんだ。私が作った砂遊びのお城も、誰かにすぐ壊されて、私が遊んでいた証拠はなくなる。なんだか、さびしいな。みんなこう思ってここから出て行ったんだ。
もう行きましょうの声がして、天使についていきました。地球に行くのは初めてで、いつも窓から見たい景色がパッと映るようにすぐには着きません。私達がいたお空と思っていた場所は、地球から遥かに離れた場所にあったのですね。
初めて見る空間を、滑るように進みます。
「真っ暗な所を通りますが、怖がらなくていいですよ」天使は親切に励まします。「大抵の子は怖がるんですよ。」そこは真っ暗な宇宙だったんだなと今なら分かります。
地球を目指して、天使は無表情で私を抱き抱えて進んでいます。どこを見渡しても、無数の星々に圧倒されました。
「こんなにたくさん星があって、地球に迷わないの?」
「私は行き慣れていますから」
天使はそっけなく答えます。
天使はたくさんの星の中の一点を指さしました。「あそこに地球があります。」
小さな地球が見えてきます。天使はあの星ですよ。もう少しで着きますからと事務的にいいます。私は初めて見る暗い空間に興奮して、そんな事は気になりません。
やがて、目の前には青く輝く星が見えてきました。
わぁ~~
青く光る地球はとっても
きれいだ!
とっても大きい!
ここで暮らすんだ~(*´∀`)
こんなきれいな地球、
それなら住むのも悪くないよ!
どんなに近づいても、着きましたとは言われない大きな星です。天使は間違うことなく目指す家に降り立ちました。私を地上に下ろすと早速家の様子を窺います。生まれる家か確認して、私達は家に入りました。(どうやって入るの?と訊いたら、私達は通り抜けられますからどこからでも入れます。でも、ちゃんと玄関から入りましょうと促されました)そして天使はどうやってお腹に入るのか教えました。
「お母さんのお腹に飛び込むようにして、お腹に入りなさい」
お母さんは立っていて、自分より大きいからお腹は目の前にあります。えー、できるかな~とためらうと、天使は体めがけて入るなら、まず失敗しません、やり直しもできますしとキッパリ言いました。私は思いきって体に飛び込みました。そしていつも眺めていたお母さんのお腹に入りました。天使はそれを見届け、お空には戻らないように、生まれる日にまた来ますと告げ、帰っていきました。
お腹に入り、お腹から家の様子が見え、勝手が分かると、天使が言ってたのと家の様子が違うのに気がつきました。お母さんはお腹の私を本当は喜んでなくて、大変だ、妊娠は大儀だと愚痴を言うのを我慢してます。
それが毎日続くので、なんだかヘンだと感じました。辛いのは私のせい?赤ちゃん、欲しがってたよね?言いたいのを我慢するほど、嫌なら、言えばいいのに?だったら何で赤ちゃんをほしいの?
誰か教えて(ノ_・。)
こんなお母さんじゃとても可愛がられないよー!それじゃ、こまるー。
こんな家だなんて。聞いてたのと違うよ!
あ
天使だ!

天使が嘘を言ったんだ。
信じてたのに!
騙されたのが分かり、すぐ文句を言いにお空に行きました。物凄く怒って。禁止されてても言わずにはいられないから、お空に行くのには迷いがありませんでした。
お空に着くと、すぐに天使に抗議しました。行った家は夫婦仲が悪く、質素な家だった。年の離れたきょうだいは、乱暴だし。聞かされていた環境とは全然違う!嘘を言ったんですね!
機関銃のようにまくしたてますが、彼女はイライラした顔で「一度決まったらダメなんですよ」「あなたは生まれるのが決まってるんですよ」の一点張り。私はどんなにイヤだと頑張ったことでしょう。彼女の顔は、もう天使には見えませんでした。
言うことを分かってもらえない!
うわぁんと泣き出しました。
目の前が真っ暗になって帰りたくなりました。見かねた他の天使になだめられ、最後には叱られ、結局泣く泣く帰りました。
もう、あの機嫌悪そうなお母さんの家に生まれるしかないんだ。楽しさがいっぱいの雲の上とは違う。生まれたら、あの家族みたいにいがみあって暮らすの?
どうしよう
こんな家じゃ、私は一生苦労する。
・・・天使に言ってだめなら、もう自分が何とかするしかない。
そうだ!

生まれないよう、お母さんの体に居続けるんだ。生まれさせる力に負けないよう、頑張るんだ。
負けたら終わりだ!
生まれたら、終わりだ!
生まれたくない!
頑張る!
私の抵抗、決意でした。
mio 


