お引っ越しして、新参者の私達を待ち受けたのは、先にいた意地悪な男の子たちの嫌がらせでしたガーン





その子達は自分達がここに来たばかりの時に、やはり先にいた子達に意地悪されたのだから、今度はお前らの番だ!とあからさまないじめをしてきました。





最初はえ~?!となれない場所で我慢してたのですが、しつこく続き、たまりかねてお世話してくれている女性(天使)の元に逃げ込んだり、喧嘩になる子もいました。私が良く遊んだ女の子は、近くに彼らが来ただけで猛ダッシュで逃げ出したものです。





天使は注意したり、諭したりして、すぐに大半の子はいじめなくなりました。ただ一人の子だけは意地悪がやみませんでした。






お世話係の女性達は意地悪が見過ごせない段階と判断したのでしょう。私達が苛められそうになるといつの間にかそばに来ていて、男児を強く叱るようになったのでした。




初めて見る怒る天使さんは怖いほどでした。悪くない私達でさえ体が縮こまり、ビックリします。その姿にみなで天使さんは本気で怒るんだ、いつまであの子は悪いんだろうと噂しました。





男児が天使達の目を盗み、意地悪をしようとしても、もはや天使が敏感に察するので、意地悪はできなくなり、されても少なくなりました。






理不尽な意地悪がいつの間にかなくなりました。なんとなくホッとし、私は遊びながらその子を目で探してみましたが、いません。男の子がいい子になったのか、見たかったのです。そして安心したかったのです。




ところが毎日探してもいないのです。不思議に思って、仲のいい子に苛められてるか訊いたのです。その子は苛められてない、このごろ見ないねと言いました。






いつも遊ぶグループを出て、他に行きどんなに探しても、いなかったのですね。





ここからいなくなるなんて、ない。前から天使達は、みんなでここで楽しく過ごしましょう、と話したのだ。あの子がいなくなるのは、天使が嘘ついたことになる。天使さん達が、嘘をつくはずないよ。






私はある日、何があったのかどうしても知りたくなり、天使に訊こうと決めました。




みんなに聞かれないよう、一人でいる天使さんに訊くんだ。





その時を窺い、やがて天使が一人でいるのを見て、自分がしようとしている事に緊張しました。私は意を決して近づきました。



「あの、意地悪な男の子がいないけど、どうしてですか?」



天使さんはドキッとして、困った顔をしました。
「あの、男の子ですか?」
「はい。この頃いじめられなくなったから・・・あの子を見ないし・・・よかったけど、もう、下に生まれたんですか?」
天使さんはいじめっ子がいなくなって嬉しがらず、却って不思議に思う私に、慈愛の眼差しを向けました。





「あの子は、ここから遠い所に行きました。」


「え?」


「私達が意地悪を止めさせようと努力したのですが、なかなか止めさせられなかったのです。それを神様に相談すると、あと少し私が(状況を)見てみよう、と神様がご自分の目でご覧になったのです。しかしここにいては彼に良くない、とおっしゃって急に出て行くことが決まったのですよ。」



ここから他に行く事はないと聞いていたのに?



約束以外の事が起きるんだ・・・!



確かに嫌な子だけど、だけど、みんないつも一緒だからと言われ、そう信じてた。天使さん達はみな平等に世話して、何をするにもみんな一緒だったんだもん。それなのに・・・


神様はみんなの意地悪の仕返しに、遠くにやっちゃったとか?



天使の言葉に返す言葉もなく、顛末に驚く私を、天使さんはあなたはあの子を心配するのですね、あの子はあちらで元気ですから、大丈夫ですよと慰めた。



そうなの?元気なんだ。ならいいか。(単純)





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新たな場所に馴染むまで、今までの女性達も外遊びの間は近くにいて、見守っていました。転んで擦りむき、「いたいよ~」と泣く子を最初は今まで通り面倒見てましたが、徐々に「これからは、あちらの人に言うのですよ」「今度は新しい人に話しなさい」と自然に導いていくのです。




私達が完全になれた頃。





学校で新学年になると、担任が替わったりやクラス替えがあるように、ここで初めてすることは自分を担当してくれる女性(天使)を選ぶ事でした。





新たなお世話係の女性達は4人。





今までの女性が「さあ、好きな人の所に行きなさい。その人にお世話してもらうのですよ。大切な事だから、良く考えて選ぶのですよ」と言い、私は誰にしようかとすぐには決まりませんでした。決めた子は女性の周りに集まっていきます。




女性は交互に二人づつ立っています。

まだ決まらない子の中にいて、どうやって決めたらいいか分からないので、何となく隣にいた知らない男の子に訊きました。
「あんた、もう決めてるの?」
「あ~もちろんだよ。」
その子は得意気に言いました。




「ここにきて仲良くなった子にここの事をたくさん訊いたんだ。そしたらここでも世話係がいて、自分で決めていいっていうから、誰が一番優しいか訊いたんだ。今までの天使は注意がうるさくて嫌だったんだ。だから担当はあまり怒らない人を訊いて、あの人に決めてるんだ。」

その子はお目当ての女性の方に目をやりました。



なんてしっかりしてるんだろう!




私と言えば、ここに来て遊ぶのが毎日楽しくて、誰が担当なのか言われないので、特に決まりがなく女性達みなで子供達の面倒をみるんだなと思い込んでました。
「そうなんだ」






男の子は早く決めないと、残った子は向こうが適当に分けるっていうから、僕と同じ人に決めちゃえよと早口でまくしたてます。じゃあこの頭が良さそうな子の言うとおりにしようか。でも・・・




「あんた、じゃ、なんですぐに行かないの」





「全員を見てから決めたいと思ってたんだ。僕、やっぱりあの人にする。もう、行くよ。折角決めたのにここにいて、向こうに振り分けられたらたまらないもんね。」
自分の選択に自信を持った顔は輝き、駆け出して行きました。
じゃあ、私もそうしようかな・・・



別の場所に立つ違う女性が気になる私は、まだ迷いました。



何してるの~!早く、優しいあの人にしてプンプン



今の私なら、そう言います!



この後、そうしなかった為にとんでもない目に遭うのですから。




mio 翼翼