去年の事、私が庭の蜜柑の木を眺めていると、散歩中の近所の年配のおばさんが、塀越しに声をかけてきました。
「その木の実は何なのですか?ここを通る度にずっと気になっていたんですけど、、、」
「小さいけれど蜜柑なんです。食べてみますか?かなり酸っぱいですよ。」
私は幾つか蜜柑を捥いで、おばさんに差し出しました。おばさんはすぐさま蜜柑を口に入れると、酸っぱそうに口を窄め身震いしました。
「まるで柚のようだね。薬味に使わせて貰うよ。」と帰って行きました。
酸っぱくて食べるのも億劫で、去年は収穫もせずにそのまま放っておいたら、小鳥に啄ばまれる事もなく、いつの間にか霜げてしまいました。
そして今年、小さな蜜柑は甘さを増して蜜柑らしい味になってきました。私は南雲先生の真似をして、美容と健康の為に皮ごと食べる事に決めました。
ある日、近所の物知りのおじさんが来て、
「これは、とても良い品種の金柑ですよ。見事な実ですねぇ〜。」と褒め称えてくれました。でも、どんなに褒められようと、これは金柑ではなく れっきとした蜜柑なのです。


