寒い真冬の海に意気揚々と船に乗り込み、主人とヒラメ釣りに行った事があります。釣り船のメンバーは私を除いては勇ましいいでたちの男ばかりでした。
皆んなそれぞれ気に入った場所に陣取り、慣れた手つきで竿を海に向かって投げていました。私も皆んなの真似をして 負けじとばかりに悴んだ手で竿を投げ、波で揺れる海の表面を見つめながらヒラメが糸を引くのをじっと待っていました。そんな事を繰り返しているうちに俄かに胸がムカムカ 頭もくらくらしてきました。密かに恐れてていた船酔いが始まったのです。乗船時間は6時間が予定されている中、まだ1時間も経っていないのにこの状況をこの先どのように凌げば良いのやら。
もう 釣りどころではありません。胃の中に入っている物すべて吐いても、最後には胃までが外に飛び出してしまう程吐いても、気持ち悪さは治りませんでした。ずっと船のへりに掴まったまま魂が抜けてしまった人の様でした。主人が「ほら ヒラメがかかっているぞ。」と言っても釣り上げる気力など全く有りません。ただただ 早く時間が過ぎる事を祈り、一刻も早く陸に上がりたい気持ちでいっぱいでした。
