結城昌治の「暗い落日」を読みました。

ハードボイルドです。

全体に救い様のない暗さが漂っています。


ハードボイルドの王道とも言うべき、失踪から物語りが始まり、殺人事件に巻き込まれる展開です。

そして、救いのない結末を迎えます。

主人公の私立探偵の真木の私生活は、ほとんど語られていません。

事件を見つめる眼そのものに徹しています。

そのあたり、ロス・マクドナルドのリュー・アーチャーを意識しているようです。

アーチャー同様に、一人称の視点からの心象風景を反映しています。


文体は、非常に簡潔です。

森鴎外の文章を連想しました。

結城昌治の文体は、小説を書こうという人に限らず、模範にするべき文章だと思います。


ミステリーとしては、バカミスとまでは行かないけれど、結構大胆なトリックを用いています。

雰囲気が暗いので、バカミスだという印象を受けないのでしょうか。

結城昌治は、ロス・マクドナルドの「ウィチャリー家の女」のトリックに不満に思ってこの作品を書いたようなのですが、確かにこの作品のトリックのほうが現実的ですけど、その分バカミス度は少ないです。

でも、バカミスとハードボイルドを愛する私にとっては、結構満足はしました。

最近は入手しにくいようですが、古本を当たってみるといいでしょう。


結城昌治の作品は、これまであまり読んではいなかったのですが、他の作品も読んでみたいと思いました。