【 やっぱり気になるレーサーレプリカ 】

ドップリとバイクにハマり込むにつれ、バイク雑誌を読む楽しみも増えてきます。当時は月刊誌の「オートバイ」と「モーターサイクリスト」が愛読書でした。
色々な記事の中でも、「国産バイク総図鑑」みたいな特集物が好きだったかも。

125ccクラス,250ccクラスと読み進め、400ccクラスのコーナーが終わると指でページをまとめて掴み、750ccクラスを飛ばして何食わぬ顔で次の特集へ…

750ccクラスを運転出来る免許(大型自動二輪=限定解除)を持っていないから、乗れないバイクの記事は読んでも目の毒です。華麗にスルーして、私の中では400cc以上のバイクはこの世に存在しないことにしていました。

でも… 正直に言えば、やっぱり気になる750cc。特に当時は最先端をまっしぐらのSUZUKI の GSX-R750。アルミフレームに新開発の油冷式エンジンを搭載したその姿は、まさに耐久レーサー。過激と言われた400cc GSX-R の更に上を行く過激っぷりです。


GSX-R750(1985年)


バイクに乗り始めた頃は、レーサーレプリカには背を向けていましたが、フレディ・スペンサーやエディ・ローソン、ランディ・マモラのGP500での活躍や、鈴鹿8時間耐久オートバイレースの記事を読むうちレースに強い興味を持つようになりました。
フルカウル、集合管、デュアルヘッドライト、アルミフレーム… やっぱりレーサーレプリカってカッコいい!
レースという特殊な環境で闘うバイクのレプリカモデルには、普通のバイクには無い非日常性がオーラのように漂っている気がしたのです。


耐久レーサーGS1000R そのものと言えるフォルム


【 GS1000R の生き写し 】

そんな1986年のある日、雑誌のニューモデルコーナーに掲載されたバイクに衝撃を受けました。GSX-R750 の更に上を行く GSX-R1100 が紹介されていたのです。

乾燥重量197kgの車体に、最大馬力130psの油冷エンジン、そのスペックとスタイルは耐久レーサー GS1000R そのものでした。当時、ロードゴーイング・レーサーという言葉を頻繁にバイク雑誌で見かけましたが、まさにそれです!
このクラスでフルカウルを装備した「レーサーライク」なバイクと言えば HONDA の VF1000R しかなかったのですが、それと比べても GSX-R1100 は忠実に耐久レーサーをトレースしていたのです。


GSX-R1100 の最初期モデル(1986年)


こんなバイクが街中を走っていいのか?運輸省は認可するのか?
GSX1100S KATANA(カタナ)に対する運輸省&警察の仕打ちを考えると、日本国内で逆輸入車として販売されることが信じられない程でした。

ああ・・・ 乗れるんだったら自分のバイクとして乗ってみたい。GSX-R1100 は自分には縁の無いバイクと思っていましたが、免許があってそれを買えれば誰でも乗れるのです。バイクが好きなら一番乗りたいバイクに乗らなきゃ意味が無い!

奮起一転して、東京府中の運転免許試験場へ「限定解除」の申し込みをしたのです。


【 免許はまだなのに 】

本屋で大型自動二輪免許の取得体験本を買い、府中試験場のコース攻略方をいろいろ研究しました。茨の道と思っていた限定解除の試験も、待合の時間に他の受験者とバイク談義をするのが楽しみでした。今、何に乗っているのか、合格したら何を買うか、府中試験場の攻略ポイントは何処か、いろいろな話題で盛り上がったり。

試験を受けること自体、一つの楽しみとなりました。



府中試験場の二輪車コース

何回か試験を受けているうち、次第に合格の予感が強くなってきました。「あそことあそこさえ上手くクリアすれば、合格するかも・・・」

手応えのようなものを感じるに従い、一歩一歩 GSX-R1100 の姿が近づいてきた気分です。高揚する気持ちを抑え切れず、近くの逆輸入車専門店へ GSX-R1100 を眺めに行きました。


日差しの中でショーウィンドウに飾られた GSX-R1100 は、キラキラ輝く装飾品のようにさえ見えました。




うう・・・ なんて美しいんだ!こんなに美しくてスパルタンなバイクがかつてあったでしょうか!白のベースに重なり合うように塗り分けられたブルーが、SUZUKI ワークスの匂いを放ちます。公道を走る自分の姿をバイクに重ね合わせ、鼻の下を伸ばしながら思い描いていると、店の人が声をかけてきました。

「見積もりをしましょうか?」


えへっ?あはっ!大型免許ありません、と丁重にお断りしましたが、店の人はカモを逃がしません。

「契約した後、合格するまで店で預かりますよ」 (^_^)v


気が付いたら、店のカウンターに座って契約していました。

車両価格は100万ジャスト、諸費用込みで110万ぐらいだったでしょうか。GSX400FW の下取り価格は、不人気車ながらかなり上乗せしてくれました。不足分は2年ローンを組んでの支払です。



下取り車となったGSX400FW。許せっ!


店を出た後は、足が浮ついて真っ直ぐに歩けないような気分でした。「免許も無いのに買っちまった~!」
この背水の陣が功を奏したのか、7回目の試験で限定解除に合格し、晴れて GSX-R1100 に乗ることが出来たのです。


【 インプレッション 】

シートに跨り、トップブリッジ下のハンドルに手を添えると、まるでタンクに覆い被さるようなポジションです。フロントスクリーンの上端は目の高さのすぐ下にあり、少し伏せるだけで上半身がカウルに包み込まれる感じです。

21世紀の耐久レースマシンは、殆どスプリントレースマシンと変わらぬスタイルをしていますが、80年代前半の耐久レーサーは、まさにこのライディングポジションなのです。



GSX-R1100 と 耐久レーサーGS1000R

目線を下に下ろすと、そこには3000回転以下の目盛りをカットしたタコメーターが!

レース用マシンでは3000回転以下はスタート前のアイドリングの時にしか使わないので、カットしてあるのが普通でした。GSX-R1100 は、そんなとこまで忠実なのです。

街中でタコメーターの針が動き出すとき、トップギアでは80km/h近くのスピードが出ています。つまり、タコが動いたら即スピード違反・・・

なんてレーシーなんでしょう!

実用上は、アイドリングの調整も出来ないので、不便でしかありません。でも、そんなことさえ許せる気分です。



GS1000R(左)と、GSX-R1100(右)のタコメータ(3000以下カット)
スピードメータは北米仕様なのでマイル表示となっている

エンジンの加速フィーリングは、荒々しくトルク感に満ちています。前まで乗っていたGSX400FW と比較した印象と言うわけでなく、当時の同クラスのバイクと比較してもトルクの太さを実感します。そのトルクの質も、滑らかな太さではなく、ゴリゴリした太さと表現したほうがピッタリかも。

そのため、トップギアに入れた5000回転前後の中回転域でもアクセルにダイレクトに反応し、一速シフトダウンでもしたかのように加速します。




エンジンノイズはわりと大きめで、カウルの隙間を通して耳に入ってきます。ですが、これこそが油冷エンジンの魅力の一つで、荒々しさと躍動感に混じって、両足の間にエンジンが存在する実感に満ちています。

油冷エンジンはウオータージャケットを持たず、大量のオイルを循環させることでエンジン内部の熱を吸収させ、それを大型のオイルクーラーで冷却させます。

原理的には空冷エンジンと変わらず、オイルを冷却に使う積極度が空冷以上という感じでしょうか。ですので、このエンジンを「油冷」と考えると誤解が生じるかも。「良く出来た空冷エンジン」と思ったほうが、イメージに近いのでは。

エンジンノイズの質も、まさに空冷に近いものがあると言えます。


SUZUKI 油冷エンジン


ハンドリングは、レーサーのようなフォルムとは若干乖離があるかも知れません。自然にコーナーをトレースするバイクというよりは、やや意識してコーナー出口を見据え、それに合わせた体重移動をしないと思ったラインを走らないと言う感じでしょうか。私が乗りこなせていないだけかも知れませんし、上手い人はもっと綺麗にコーナーをクリア出来ると思います。

でも、その意識して曲がるようなフィーリングも、GSX-R1100 のコーナリングの醍醐味だと思うのです。バイク任せでなく、自分が積極的に働きかける楽しさが魅力なのです。


【 高速安定性 】
GSX-R1100 の最大の弱点は、高速度域での安定感の「乏しさ」にあると思います。

220km/hまでは不安なく速度を上げていけますが、240km/hから先は車体に対する安心感が消え、次第に不安感が増してきます。

真っ直ぐに走らないとか、車体がブレるというわけではなく、あくまで安定感が「乏しくなる」という感じです。

同年代の他のバイクに比べて安定性が無いわけではありませんが、耐久レーサーのような車体のイメージに対し、期待に応えていないという程度かも。




例えば、翌年(1987年)に YAMAHA から発売されたFZR1000だと、高速域でもメーターを見続けながら「220・・・ 240・・・ 260・・・」と読み取れます。

ですが GSX-R1100 の場合は、メーター読み「220・・・」で視線を前に戻し、「240・・・」でまた前を、「260・・・ かな」でアクセルを戻すと言う感じです。


別の例えをすると、FZR1000 は定規を使って直線を引くような安定性ですが、GSX-R1100 はフリーハンドで直線を引くみたいです。



YAMAHA FZR1000(1987年)

これは、GSX-R1100 が採用しているダブルクレドール式アルミフレームの、構造的な剛性不足に起因しているのではないでしょうか。アルミをフレームに使うなら、FZR1000 のようなツインスパー式(YAMAHA 流に言えばデルタボックス式)のような大径薄肉フレームでないと、剛性の確保が難しそうですね。

【 各年式の仕様 】
油冷式エンジンを搭載した GSX-R1100 は1992年まで生産されましたが(その後、水冷式エンジンを搭載)、このページで紹介している初期型シリーズ(GU74)の生産期間は、1986年~1988年までの3年間です。各年式の大まかな特徴を紹介します。



[1986年型]

私が乗っていたGSX-R1100 は、この年式です。(色は青/白)

最初期モデルであるこの型は、ヨーロッパ仕様と北米仕様はタンクの形状が異なります。ヨーロッパ仕様はタンクの後端がやや角張っていますが、北米仕様は若干丸みを帯びています。サイドリフレクターの有無も識別ポイントで、ヨーロッパ仕様には無く、北米仕様にのみ前後に取り付けられています。

また、北米仕様のウインカーはスモークタイプではなく、やや大柄なオレンジ色のウインカーとなっています。

上の写真の左がヨーロッパ仕様、右が北米仕様です。


[1987年型]

タンクの形状が、ヨーロッパ仕様、北米仕様とも、1986年型の北米仕様と同じものになりました。またフロントフェンダーの形状が変更され、サイド部がややエアロ効果を意識したデザインとなっています。

レプリカファン以外の購買層にも幅広く受け入れられるよう、落ち着きのあるカラーリングに変更されました。最高出力130psに変更はありません。


[1988年型]

形式GU74の最終型です。リアタイヤがサイズアップ(リム幅150mm→160mm)され、ホィールの形状も3本スポークタイプに変更されています。1987年型までは、ホィールの剛性がやや足りなかったようで、それが高速安定性に若干の影響を与えていたようですが、このモデルではその点を見直されています。当然ながら、形式GU74においては、もっとも完成度の高いモデルです。

このモデルも、最高出力130psに変更はありません。


【 あとがき 】

会社から帰った後、GSX-R1100 で意味も目的も無く出かけるのが楽しみでした。

週に何回か、会社帰りに同僚や友人と酒を飲むときも、途中でふと「ああ・・・ これで今晩はバイクに乗れないな・・・」とチラッと思ったり。


GSX-R1100 が有ったからこそ、私が今でもバイクに乗り続けているのだと思います。当時存在したバイクの中で、全く妥協の無い一番欲しかったものを手に入れた喜びは例えようがありません。

今もこのバイクを懐かしいと思うと同時に、私に楽しみを与えてくれたことに感謝しています。


--------------- 主な諸元 -------------------------


車名:GSX-R1100

形式:GU74


全長×全幅×全高:2115mm×720mm×1235mm
軸距:1460mm
シート高:810mm
乾燥重量:197kg

エンジン型式:油冷式4サイクル4気筒
排気量:1052cc
最高出力:130PS/9500rpm
最大トルク:10.3kgm/8500rpm


燃料タンク容量:19L
タイヤサイズ 前:110/80-18
タイヤサイズ 後:150/70-18


発売年:1986年

価格:概ね1,00万円前後(逆輸入車のため定価なし)


-------------- 1986年のアルバムTOP5 -------------


1位 安全地帯:『安全地帯IV』
2位 KUWATA BAND:『NIPPON NO ROCK BAND』
3位 レベッカ:『REBECCA IV』
4位 松任谷由実:『DA・DI・DA』
5位 松田聖子:『SUPREME』


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