【 初めてのバイク選び 】
学生時代の最後の年(1984年)、バイクに乗りたい願望が混み上がり、バイトで貯めたお金で自動二輪免許(中型)を取りました。

友人の何人かがバイクに乗っていたことや、スクーターでバイクの楽しさの入口を知ったからというのもあります。でも一番の理由は、単純でストレートながら「バイクに乗って遠くに行きたい」なのです。
理由なんて、後から考えたって半分はコジツケですから。

免許を手にした後に考えることは一つだけ。「さあ、どんなバイクを買おうか?!」
初心者にとっては、最も難しくて楽しい悩みです。

ですが、既に意中のバイクは免許の取得前に決まっていました。
それが SUZUKI GSX400FW なのです。


【 どんなバイクか 】
GSX400FW は、当時のSUZUKIの400ccクラス主力マシン、空冷式並列4気筒エンジンを搭載したGSX400Fの後継車として1983年に発売されました。

新開発の水冷式エンジンは最大50馬力を発揮しましたが、時代はパワー競争の真っ盛り。「今日の最強マシンは明日のスタンダードマシン」ともいえる程のスペック競争をメーカー同士で繰り広げていたのです。GSX400FWのエンジン性能は瞬く間に平凡なものとなりました。



先代モデルのSUZUKI GSX400F(1983)


SUZUKIはその劣勢を挽回すべくエンジン各部の見直しを行い、9馬力上乗せの59馬力のエンジンを新たに搭載し、1984年のマイナーチェンジで「2型」を発売しました。私が買ったモデルもこの「2型」です。落ち着きのあるハーフカウル、当時流行のアンチノーズダイブサス、何よりカッコいいのが白地にブルーの流れるような美しいグラフィック、もうこれしか目に入りませんでした。


SUZUKI GSX400FW(2型)

【 比較検討あれこれ 】

周りのバイクに乗ってる友人達の意見は一致して、「どうせカウル付きに乗るのなら、少々高くても GSX-R!」

SUZUKI GSX-Rは発売されたばかりの新型車で(1984年)、400ccクラス最高の59馬力はもちろんのこと、クラス初のアルミフレームに耐久レーサーイメージの2灯式ヘッドライト、クラス最軽量の157kgの車体、ヨシムライメージの集合管など、バイク乗りが欲しがるツボを全て心得た垂涎のマシンでした。
というか、当時の中型車としては、考えられる全ての贅を尽くしたバイクなのです。


SUZUKI GSX-R(1984年)

初めての自動二輪車に、そこまでの性能と装備は要らないよ…というのが私の気持ちでした。
ましてや押出し材のアルミフレームだなんて、アパートのアルミサッシと同じじゃないか! コケたらすぐ逝っちゃうし(廃車)、素人にはリスクの高いものに思えました。(当時のアルミフレームは現在のようなツインスパーではなく、ダブルクレドールをそのままアルミ化したような感じでした)
それに買うのだけで精一杯なのに、フルカウルだとコケて傷付いたときの修理費が心配です。

その点、私が欲しい GSX400FW(2型)は、手堅いスチールフレームにリスクの少ないハーフカウル、それにエンジンは GSX-R と全く同じものなのです。(GSX400FW 1型のエンジンをベースに GSX-R のエンジンが作られ、それが再び GSX400FW 2型に使われました)
その高性能さと堅実さが気に入り、素人ながらのバイク選びは GSX400FW で決まったのです。

【 契約&納車 】
友人の行きつけの店であれこれ説明を聞き、初めてのバイクに対する不安と期待に鼓動を高めながら、無謀にも新車での購入契約をしました。
定価は56万円、諸費用を入れると、値引き分を差し引いても60万円を超えます。
バイト代の貯えをつぎ込んでも半分に満たないので、残金はローンにしました。
もうすぐ大学も卒業だし、就職後はローンの支払いも楽だろうと考えたからです。

10日後の納車までか待ち遠しく、悶々とした日々を過ごしました。準備よくバイクカバーを前もって買いましたが、嬉しさのあまり部屋の中で広げて上から寝転んだりして、指折り数えてその日を待ちました。納車されたら殆ど一緒の布団で寝そうなほどのハイテンションです。


SUZUKI GSX400FW(2型)


納車の日、店員さんからの操作説明は全て上の空で、かえって焦らされるような思いで鼻息だけを荒げていました。

新車での慣らしに気をつけながら、落ち着くための深呼吸息をしてからスタート!
わっ…!! すげえー!


初めて経験するDOHC水冷式4気筒エンジンは、教習所で乗ったHawk2の空冷式2気筒エンジンとは、全く次元の違う滑らかなものでした。
慣らし運転なのでアクセルは半分しか開けられませんでしたが、ガラスの上を氷が滑るようなスムーズさは道路から浮いているようで、タイヤで走っていることが信じられない程でした。



滑らかな水冷式4気筒16バルブ

【 失った時間を取り戻せ! 】
それからの毎日はバイクを中心にまわる日々でした。

暇を見つけては、というより無理やり時間を作って、いろんなところに出かけました。伊豆,箱根,富士はもとより、信州,房総,日光など、関東近辺の主なところを走りまわりました。いくら走っても、納車の日に味わった水冷式4気筒エンジンの感動は、薄れたりしません。走れば走るほど、違った感動が違った景色の中でこみ上げる感じです。


なぜ、もっと早くバイクに乗らなかったのか!

こんなに素晴らしい乗り物に巡り合った時期が、時間のたっぷりある大学生活の終わりが近づいてからということが悔やまれました。

失った時間を取り戻すかのように、大学卒業後に就職してからも、帰宅後や休日の時間の狭間を使ってバイクを乗り回しました。




【 インプレッション 】

1984年当時、旋回性の高さを売りにしたフロント16インチタイヤが流行りましたが、このバイクもその流れにのってか16インチのフロントタイヤを装着しています。変に切れ込む感じもなく、私にとっては自然なハンドリングに思えました、逆に言えば、「おおっ!16インチ!」と思える旋回性はありません。


高速域でも車体は安定し、400ccクラスとしては平均以上のスタビリティです。小さめのフロントカウル&スクリーンですが、見た目以上に防風効果があり、長距離ツーリングも快適です。GSX1100S カタナのスクリーンとデザインが似てるのも、SUZUKI の拘りかも。


一体式のコンビネーションメーター


メーター周りの装備は豪華絢爛で、スピード,タコ,水温,燃料の各メータに加え、液晶式のギヤポジションインジケーターや、バッテリー液面の警告ランプ、各灯火ランプの球切れを知らせるオーケーモニターなど、まるで自動車のようです。

当時、「豪華=自動車的」みたいな発想をメーカーが持っていたようで、バイク乗りが求めるバイクらしさとはズレが有ったかもしれません。でも、このバイクの豪華なメーター類はかなり便利で、特にギヤポジションインジケーターは初心者の私には有難い装備でした。


トラブルは特になく、強いて言えばレギュレータが壊れたことがあげられますが、電装系のトラブルは他のバイクにもよくあったことで、GSX400FWに限ったことではありません。



【 あとがき 】

20年以上前に乗っていたバイクですが、運転していた時の感覚は今でも思い出せます。初めてのバイクの印象って、それだけ強烈なのですね。

このインプレもかなり力が入って、予想外の長文になりました。


当時も今も、GSX400FWはハッキリ言ってかなりの不人気車です。レーサーレプリカブームに巻き込まれ、GSX-Rの影に隠れた不運のバイクと言えます。

そんな境遇だからこそ、一層の愛着を感じているのかも。


--------------- 主な諸元 -------------------------


車名:GSX400FW

形式:GK71A

全長×全幅×全高:2110mm×735mm×1215mm
軸距:1435mm
シート高:780mm
乾燥重量:178kg


エンジン型式:水冷式4サイクル4気筒
排気量:398cc
最高出力:59PS/11000rpm
最大トルク:4.0kgm/9000rpm


燃料タンク容量:17L
タイヤサイズ 前:100/90-16
タイヤサイズ 後:110/90-18


発売年:1984年

定価:566,000円


-------------- 1984年のヒット曲 --------------------

1位 わらべ:『もしも明日が…。』
2位 安全地帯:『ワインレッドの心』
3位 松田聖子:『Rock'n Rouge』
4位 チェッカーズ:『涙のリクエスト』
5位 中森明菜:『十戒 (1984)』

にほんブログ村 バイクブログへ


ナツメロ風愛車レポ 次ページへ