2000年、スーパースポーツバイクを取り巻く状況が一変します。

海の彼方のヨーロッパで、ZX-12R や GSX1300R のような、最高速が300km/hを超えるバイクに対し、規制を求める声が出てきました。バイク事故の増加を憂慮したオランダ交通省の大臣が、バイクに最高速規制をかけるようEU各国に働きかけたのだそうです。



それまでも、ヨーロッパ各国は個別にバイクに対しての規制をかけていました。ドイツやフランスは100馬力を上限とする馬力規制、イギリスは125馬力(のち、一時的に撤廃)、スイスは環境保護のため、極端な排ガス規制と騒音規制。


逆輸入車として1000ccクラスのバイクを日本で買う場合、仕向け地がどこの国かが問題になります。以前、イタリアやオランダ、ベルギーなどは特に規制もなく、これらの国に向けて輸出されたバイクは「ヨーロッパ一般向け」と呼ばれ、フルパワー車の証とされました。


一時期、ZZ-R1100などはかなりの人気が出たため玉不足となり、100馬力規制のかかったフランス仕様車などが逆輸入車として日本に入ってきたこともあります。

Kawasaki の新車はヘッドライト下とタンク下に、「仕向け地コード」である3桁数字のラベルが貼られていました。フルパワー車である「ヨーロッパ一般向け」仕様のコードは「401」なので、バイク乗りはそれを確認してから買うようにしていました。

(注:「401」以外にもフルパワー仕様はあります)




しかし、2000年に提案された規制は、馬力や排ガスはもとより、最高速度そのものに対する規制をEU全ての国に適用するという大きな動きだったのです。
新案は採用され、その結果、2001年から欧州で販売されるバイクについて、以下の規制が施行されることとなったのです。

・最高速は300km/hまでとする。

・構造上、それ以上のスピードが出る車種にはリミッターを取り付ける。
・スピードメーターに300km/h以上を表示してはならない。

これは明らかに、ZX-12R や GSX1300R を意識した規制でした。スピードの出しすぎが危険なのは車も同じ筈なのですが、対象はバイクだけとされました。


ZX-12R のスピードメーター

大型バイクのメイン市場であるヨーロッパで新規制がスタートしたことにより、日本のメーカーは他の市場向けのバイクにも、この規制に適合した仕様で輸出することになりました。大消費地であるのヨーロッパの規制に適合させてから他国向けの仕様車をリリースする関係上、そうせざるを得ませんし、バイクメーカーが社会的批判を受けることを避けたためと思います。
ヨーロッパでのスピード規制が、実質的に世界共通のものとなったのです。


次ページへ