1996年、HONDA の CBR1100XX(Super Black Bird)は、7年近く世界最速に留まっていた ZZ-R1100 を、その地位から引きずり下ろしました。

164馬力のエンジンは、ZZ-R1100 の147馬力を優に上回り、7年という時間の間に進歩した工業技術の差を感じさせるものでした。


世界最大のバイクメーカーHONDAが、その持てる技術を惜しむことなく注ぎ込み、その技術力の高さを世界のバイク乗りたちにあらためて思い知らせたのです。


CBR1100XXのサイドネーム「Super Black Bird」は、マッハ3以上を誇る世界最速の偵察機 SR-71 BlackBird になぞらえたもので、抜きん出た高性能の証として多くのHONDAファンに受け入れられました。




HONAD CBR1100XX(Super Black bird)

それまで HONDA といえば、最高速や最大馬力などの他メーカーとのスペック競争からは一歩身を引いたような感じがありました。

まるでメーカー側のスタンスとして、最高速に至る動力性能やパフォーマンスはそれ自体が目的ではなく、バイクとしての総合的な高性能を求める結果に過ぎないんだとでも言いたげです。

例えば、1987年に発売された CBR1000F は、他社のライバルと比較しても最高速においてけっして引けを取らないものでした。
しかし、カタログでのセールスポイントはフルカウルボディによる恵まれた空力特性と、それによる快適な乗り心地を前面に出したものだったと思います。


HONDA CBR1000F(1987)

まるで、無用な最高速競争の行き着く先は、バイクの本当の楽しみを奪う結果に成りかねないこと、バイクそのものの将来を危うくしかねないことを判っているかのようです。
当時20代の私には、そんな HONDA の分別が「優等生」に見えてしまって、本能を刺激する魅力に乏しいメーカーという印象を持っていました。

しかし CBR1100XX はそんなユーザーの諦めに似た先入観をひっくり返しました。
「やろうと思えばいつでも出来たんだ」

CBR1100XX の持つ、限りなく300km/hに近い最高速性能が、ライバル車の新たな目標となったのです。


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CBR1100XXの主な諸元は以下のとおりです。

(括弧内はライバルのZZ-R1100(D型))


型式:SC35(ZX1100D)
発売日:国内販売無し(逆輸入でのみ購入可)


全長×全幅×全高:2160×720×1170(2165×730×1205)
軸距:1490mm(1495mm)
シート高:810mm(780mm)
乾燥重量:223kg(233kg)


エンジン型式:4ストローク並列4気筒(DOHC16バルブ)

冷却方式:水冷
排気量:1137cc(1052cc)
最高出力:164PS/10000rpm(147PS/10500rpm)
最大トルク:12.7kgm/7250rpm(11.2kgm/9000rpm)


燃料タンク容量:22L(24L)

タイヤサイズ 前:120/70-17(←)
タイヤサイズ 後:180/55-17(←)


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