今回は誰しもが実に簡単で日常的に行える免疫向上に対する考え方を1つ
 紹介させていただきます。


 <運動と笑いと免疫>
  近年、笑いが免疫能に及ぼす効果について、心理学、精神生理学、免疫学、
 疾病学からの研究が多数発表されており、遺伝子レベルでも報告があります。

 「笑いは健康によいし病気も治す」とよいことずくめのさまざまなデータが
 発表されています。伊丹らが1992年にがんや心臓病の患者を含む20~62歳の
 19人に、吉本新喜劇で3時間たっぷり笑ってもらったところでNK細胞を調べ
 た実験が反響を呼びました。すなわち、多くの被験者でNK活性が高まり、免
 疫力の亢進が示唆されたのです.興味深い結果ですね!

  笑いのレベルの高まりで、呼吸により酸素交換が増し、骨格筋の特に前体
 幹筋群(頭部、頸部、胸部、横隔膜、腹部)の活動と心拍数が増大します。
 これらの現象は、心血管系、交感神経系を刺激し、カテコールアミンの産生
 を促します。つまり、顔面という局所のみではなく、全身的にも適度な活動
 状態をつくり出すことになるのです。笑いそのものが運動にも通じる部分が
 あるのです。

  笑いが血清コルチゾールレベルを下げ、活性化Tリンパ球を増量し、NK細
 胞活性を高めることが明らかにされました。化学的、物理的、生物学的、心
 理的ストレスを受けると交感神経系の緊張が生じ、精神面では不安を経てう
 つ状態になります。一方、身体面では副腎髄質からカテコールアミン、副腎
 皮質からコルチゾールが分泌されます。これらのストレスホルモンの過剰な
 作用で、血圧、心拍数、血糖値の上昇、血液凝固系の亢進など、生活習慣病
 と関連が深いさまざまな反応が生じるのです。

  また、コルチゾールの作用で神経伝達物質のセロトニンの分泌量が減りま
 す。うつ病の患者ではセロトニン受容体の機能低下が知られており、加えて、
 セロトニン受容体ノックアウトマウスは2型糖尿病にいたるといいます。興
 味深いことに、笑いセラピーによって2型糖尿病患者の血糖値が低下し、NK
 細胞活性を亢進させる遺伝子が活発になることが報告されています。

  このほか、関節リウマチ患者では落語鑑賞後に血中コルチゾール値ととも
 に炎症を悪化させるIL-6値も低下することが観察されています。

『笑う門には福きたるで、本来の痛みの根源に気づいていただき、
痛みや機能が改善する喜びをくための手法に磨きをかけ、自己医療のなかで
  笑いや喜びをもっと提供できる取り組みは非常に重要なことであり、
 免疫向上の1手段となると考えます。
  
  普段から笑うということは楽しいだけでなく、健康にも大きなプラスの影響をしている
  ことは確かなようです。健康を維持するには、食事や運動だけでなく、楽しい環境づくり
  も必要かもしれませんね(^_^)

  引用文献
  大野 秀樹 木崎 節子:『運動と免疫 からだをまもる運動のふしぎ』
                           有限会社 ナップ