ラーメンズな夜 | イラストレーターleolio 『歩こうの会 おざな(Ozana)』

ラーメンズな夜

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 先週末、下北沢にラーメンズの舞台を観に行った。

 元々、どうせチケットも取れないだろうと鼻っから行く気は無かったのだが、前日にたまたま入った新宿の金券ショップにて、公演期限も迫っているということもあり定価と大して変わらない値でチケットが売られているのを見付け、こりゃ行くしかないとチケットを買ったのだった。

 彼らのコントの舞台はビデオなりDVDなりで随分繰り返して観たけど、本物を見るのはこれが初めてだ。一時期、うちのテレビはラーメンズしか流さなかったくらい彼らは気に入っている。
 お笑い全般好きだけど一線引いて一種の文化と呼ばれそうな位置にいる二人。今日のお笑いブームに乗ることもなく、そういった番組には一切出演せず、最近ではお笑いどころか個々でテレビCM、映画でもよく見かける。小林氏はトヨタホーム、ケンタッキー、片桐氏はマスターカード、なんか日清だか丸ちゃんだかの春雨ヌードルのCMと一流所の企業のCM起用されているのもただのお笑いコンビとは呼べないところだろう。お笑いがCMに起用される際は何かしら面白みを必要とされるはずだが、それらCMに至っては観る限りお笑いとして個人の笑いは必要とされていない。どこかの俳優かのような扱い。それゆえに映画にも出演している。
 それでも「文化」と呼ばれるのを避けるかのように、舞台の前に配られたチラシにも作・演出を兼ねる小林氏の「コント」を追及して行きたい旨が書かれていた。いろいろやってはみるけど一番はやはりコント。そして最後に携帯の電源のオフの願いが一緒に書かれているのも舞台への愛情だろう。

 目の前で実際に観てみると、DVDなどでは観られない生での緊迫感と臨場感、そして改めて充分に練って構成された笑いの完成度の高さに驚く。もう十年もやっていれば、お笑いの舞台など固定客などが付き、何をしても客が笑ってしまうといったお客の質の低下、お笑いグループのアイドル化も起きておかしくないのだが、そうは行かないのがラーメンズのラーメンズたる所以だろう。お客をいい意味で裏切り、裏切りの再構築を巧みに作り上げている。下手なお笑いグループだと、こちらが流れの先がすぐに読めたり小手先にのお笑いに逃げるのだが、ラーメンズは裏切り続けてくれる。本当に小林氏の作る脚本、それに乗る片桐氏のキャラは全くそこらのお笑いと次元が違う。これで夏からには今ある小林氏のプロデュースしている劇団の他に、もうひとつ多人数のラーメンズを旗揚げするというのだからその新たなコントへ注ぐ意欲に驚く。

 時間はあっという間に過ぎ、大笑いし過ぎて頬の筋肉が痛くなった。アンコールに四回も出てくれる人たちも初めて見た。丁寧で誠実なその態度、アーティストの人間味の方に目を向けるのはあまりよく無いのだが、やはりそこらも惚れてしまう。だから客も彼らを愛し拍手という形でアンコールを四回も求めてしまうのだ(笑)

 遠まわしの作られた言葉より、笑いの方が元気付けられるよね。久しぶりに人によって元気付けられた夜でした。
 
 あと京都に住んでいたおかげで、「ようじや」のコントがすぐ理解出来て良かった。東京でそれやるのもどうかと。



 小雨降る帰りの下北沢駅前はラジオの公開放送が行われていたみたいで、駅前にテーブルが置かれて三人のmcが何やらトークをしていたが、駅内で事故でもあったのか彼らのテーブルほんの数メートル先には救急車が止まっていた。赤いランプが小雨の中、印象的に光って回っていた。またその横では自筆のイラストを路上販売している兄ちゃん。mcの女の子が有名人なのか知らないが一生懸命写真を撮っている数人の男の子達。そして救急車を前に笑っているmcの女の子。なんだか不思議な夢を見ているかのような光景だった。もっと雨が強く流し去ってもいい気がした。


 大阪の遊園地のUSJがユナイテッド・ステイツ・ジャパンというのも初めて知った夜だった。




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