今、教育現場は加速度的に変質してきていますが、すぐにでも止めて欲しいものの一つがいわゆる「全国学力テスト」やその模擬「学力テスト」(NRT)です。

 

 表向きは、教育の質を上げ、教育の全国格差を無くすような聞こえの良い説明が国からなされていますが、果たしてその実態はお粗末です。

 

 現在、学校現場では都道都府県や市町村の教育委員会から、この学力テスト群の点数を上げるよう、様々な圧力をかけられ続けています。

 具体的に何を求められているかと言うと、全国学力テストでの平均得点が、「全国平均」を上回ること、さらにできれば全国で少しでも上位に入ることです。

 

 小学校の現場でも、教務、各担任たちが、学力テストの分析を強要されて、全国平均を上回ったかを常にチェックさせられます。

 

 これを毎年、毎年繰り返しています。

 この異常さに気付いていない人がたくさん居ます。

 

 「全国平均」を「基準」にしているということは、「常に」平均に達していない都道府県、市町村が存在するということです。

 それが平均値というものです。

 

 つまり、決して終わることのない学力点数競争に、教育現場はさらされ続けているということです。

 

 この結果、現場には様々な弊害が生じています。

 

 少しでも授業時数を確保するために、運動会や学芸会などの行事を午前開催にしたり、遠足などを廃止したり。

 家庭教育に干渉して、家庭学習の時間を強制的に上げさせようとしたり・・・。

 

 とても書ききれませんが、点数向上につながりそうなことを、とにかく実行しようともがいています。

 子どもたちも、教員たちも、精神的な余裕がなくなり、色々な荒れを生んでいます。

 

 数値を問題にすると言えば、人間ドックなどの健康診断がありますが、あれの方がまだマシだなとも思えます。

 なぜなら、健康診断は一定の基準値が定められ、それを満たしていればひとまず問題なしという捉えだからです。※これさえ、身体の個人差を無視した気休めに過ぎませんが。

 

 百歩譲って、学力テストにも、最低この点数をクリアすれば、一定の質を満たしているとする基準値が「明確に」設定されているのなら、まだ話はわかります。

 一定の質を保つことは、何の仕事や商売においても必要とされることだからです。

 

 しかし、国がしようとしていることはそうではありません。

 常に差が生まれる性質の「全国平均値」をもとに、全国の都道府県、市町村を競わせる学力競争を仕組んでいる形です。

 

 がむしゃらに国際競争力を底上げしようと、学校現場、子どもたちを追い立てているのが現状と言えます。

 国策ありきの教育という図式です。

 子どもを出発点とした教育と真逆とも言えます。

 

 小学校の外国語教育の「教科化」などもその最たる例です。

 そもそも、小学校の教員は英語の免許(中学英語など)を持っていません。

 

 英語を教えられるほどの専門性を持っていないのに、無理やり「教えさせられて」いるわけです。

 表上は、小学校の免許に、指導できる要件は含まれている(後付けの理由)と言っているだけで、英語教育ができる専門知識や技能は持ち合わせていないのです。

 国際競争力を上げる国策を優先している結果です。

 現場の教員もたまったものではありません。

 

 本来、一定の教育の質を確認するのなら、全国学力テストは例えば5年に一度の実施とか、そういう形で十分なはずなのです。

 そして、最低基準点をクリアしているかを確認する程度で十分なはずなのです。※そもそも学力や人間力は点数だけで測れるものでもありませんが・・・。

 

 それを毎年行わせて、国が各都道府県、市町村にプレッシャーをかけ続けているのが「全国学力テスト」の内実です。

 特に、現場に最も近い「教育委員会」の目の色の変え方は、もう尋常ではありません。

 国から異常な圧力をかけられ続けているからです。

 結果、是が非でも「全国平均越えを達成しよう」と、様々な形で、教育現場に圧力をかけ続けています。

 

 そもそも「教育委員会」という制度は、現場各校の教育の独立性や公平性を保つために、国からの理不尽な教育内容の強制が及ばないようにと、子どもたちや保護者たちを守る「盾」となる趣旨で生まれたものですが、現在は、国の教育施策を忠実に現場におろし、強要する為の「出先機関」となってしまっています。

 悲しいかな、それが現実の姿です。

 

 その現実を知らない教員や保護者たちが大多数の時代となってしまいました・・・。

 

 賢明な保護者の方の中には、この構図の異常さに気付いて居られる方も居ますが、その数はごくごく僅かです。

 保護者も教員も、馬鹿バカしい国力向上の為の無益な「点数競争」に踊らされ続けています・・・。

 

 何とかこの流れを変えたいのですが。