この数年で感動したこと。何といってもメルケル前ドイツ首相の国民に向けたスピーチです。目をしっかり前に向けて、訴えかけます。

このコロナ禍の中、自らが感染する恐れがある中で働いている医療従事者はもちろん、スーパーのレジ係・商品棚の補充をしている人々に感謝します。

そして、多くの人が命を落としていく中、一人一人の「いのち」についても語ります。
亡くなった人は、ある人、人たちにとってかけがいのない人であって、単なる抽象的な数値で済む話ではないと。私たちの社会は、一つ一つの命、一人一人の人間が重みをもち、つながる共同体であると。
人間の命は決して数量化されるようなものではないこと。誰もが尊厳を持ったかけがえのない平等な存在であり、彼女はそれに深い敬意を表しています。

何かを見ながら棒読みするわけでなく、国民一人一人を見つめて語りかけます。心の底から、彼女の思いを語りかけます。みんなと同じく「不安」をかかえ、「弱い」存在であるという立場から訴えます。「頑張ってください」などとは一言も言いません。このように語りかけられた人たちはどう感じたでしょうか。受け止めたでしょうか。

このスピーチを聞いた人たちは、「首相は国民の方にしっかりと目を向けている」と感じたと思います。そして、信頼できる人との「つながり」を強く感じたのではないでしょうか。自分たちの仕事が、人の命を守ることに寄与しているということを感じたのではないでしょうか。自分の仕事に「誇り」をもてたのではないでしょうか。みんながつながって、社会が成り立っているのだということを確認できたのではないでしょうか。だから、この危機の中。みんなで協力して生きていくんだというきもちになったと思います。つまり、それぞれの努力に敬意を払って生きることをあらためて知ったのではないでしょうか。何よりも、一つの「いのち」はすべて平等でかけがいのない貴いものだということをあらためて感じたのではないでしょうか。

これこそが真のリーダーだと強く感じました。この人なら信頼できる、この人についていきたいと思いました。
少しも難しい言葉を使わず、相手の心に響くスピーチができるというのは、その人(メルケル)がこれまでどう生きてきたかを表していると思います。いろいろな苦しみや痛みを経験してきた人は、今、「不安」でいっぱいの人、「弱い」立場にある人のことを理解できます。そして、同じ苦しみの地平に立って、「不安なのはあなた一人ではありません。私も不安なのです。でも、あなたは一人ではありません。みんなでつながって、助け合ってこれを乗り越えましょう」と、心の底から語ります。

そして、一国の首相がなすべきことをしっかりと理解しています。だからこそ、国民一人一人のために何をなすべきかを常に考えているのでしょう。

残念ながら、我が国のリーダーの言葉にはまったく感動できませんでした。何も伝わりませんでした。何も響きませんでした。それは、その人が今までどう生きてきたかをはっきりと表しているからでしょう。

 

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