タイブレーク:ソフトボール公式試合は、7回が最終回で…10回裏まで決着が付かない時に、11回表からノーアウトランナー1塁から試合が始まるルール。(決着を早く付ける為のルールでもある)



あれは、12回裏の守りであった。
2アウトランナー2nd。
私のサインとは異なるど真ん中のボールをピッチャーが投げてきた。
(マズイ、打たれる)


次の瞬間、センター前にヒットを打たれる。
センターの後輩プレイヤーに…

「来い!バックホーム!」と私は、叫んだ。

2塁から、大柄なランナーがホームベースを目掛けて一心不乱に走って来るのが見えた。
(こいつ、足からスライディングして当たって来るだろうな。)

センターの後輩からのバックホーム投球は、ワンバウンドでベストコースに!

ボールをシッカリ掴み…ホームベースをブロックする。

その大柄なランナーは、他の試合では「清原タックル」(アメフトタックル)をしてホームインしていたのに…何故だか、綺麗なヘッドスライディングをしてきた。

私は、座り込みながら…そのランナーの左肩から頭にかけて払いのけた。

「アウト!」主審の声。

「チキショー!」と、そのランナーは、私の背後で叫んだ。

…と、ここまでしか記憶に無いのだが…確かな記憶は、その試合はタイブレークで負けた。

長い長い試合だった。

埼玉県大会ベスト6敗退。
「勝てる!」と思った試合に負けた悔しさから、目茶苦茶泣いた。

後片付けをして、グランドから出る時に、相手ピッチャーと遭遇した。

悔しかったが… 涙を堪え
「ありがとうございました。」と、挨拶をした。

そのピッチャーも、目が真っ赤で…土壇場の勝利に泣いていた。

「あぁ…ありがとう。」と、彼女はハスキーボイスで呟いた。

「何故?12回の裏に足からスライディングタックルしなかったのですか?」と、聞きたかったが…彼女のスポーツウーマンシップに感謝した。
(もし、私が吹っ飛んで負けたら恥だったすぃー笑。)


そして、次の年の地区大会には彼女の姿は無かった。
その高校は、張り合いの無い程、弱いチームになっていた。
一人のピッチャーを失った事で。


私が社会人になり、とある駅の通路を歩いていると、偶然にもあの時のピッチャーに逢った。

不自然に両足ヨチヨチ歩きをしている姿に、思わず呼び止めた。

レ:「お久しぶりです。覚えてますか?えっと、足…痛いのですか?」

「あぁ、○○高校のキャッチャーだよね。両足捻挫しちゃってさ、リハビリの帰りなんだよね、ははは。」

レ:「覚えていて貰って光栄です。歩けますか?肩貸しますよ。」

「ありがとう。リハビリがてらに歩くから、大丈夫だよ。」

レ:「お大事になさって下さい。応援してますから。頑張って下さい。」

「ありがとう。とにかく両足治さなくちゃね。」

その後、彼女の活躍は見ていないが…何年か前に、引退したと聞いた。

元、女子プロレスラー山田敏代。

あのソフトボールの試合は、今も忘れ無い。