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僕は、気持ちの良い微睡みの中にいた。

ん‥‥誰?呼んでるのは‥‥?気持ちよく眠ってるんだから、起こさないでよ‥‥

「皇愛‼‼起きろ‼」

お兄ちゃんに頭を猫パンチされて、ようやく目を開ける。

「何?お兄ちゃん‥‥」

「悠長に寝てる場合じゃない‼ベランダのサッシ見てみろ」

お兄ちゃんにそう言われて、眠い目をこすりながらベランダの方へ目を向けた。

途端に目が覚め、尻尾が膨れ上がり、身体中が総毛立つ。

「どうしたのさ、これ!どうなってるの??」

サッシ全部のガラスにヒビが入っていた。

「解らん。トイレに起きて、終わってふとベランダ見るとこうなってた」

「音しなかったよね!?」

「ああ、しなかった。とにかく家中の確認だ!警戒警報発令!警備開始だっ!」

「了解‼‼」

「俺はリビングから始めるから、皇愛は寝室から始めろ」

「わかった!」

僕たちは二手に別れて警備を開始した。

部屋中の隙間や家具の上も、何者かが隠れていないかチェックしていく。

鼻と髭、そして聴覚。身体中の感覚という感覚を研ぎ澄ます。

それぞれの持ち場の確認を終え、廊下で合流した。

「お兄ちゃん、こっちは虫さんの1匹も居なかったよ」

「こっちも異常なしだ」

顔を見合わせ、ホッとする。

それにしても、どうやってヒビが入ったんだ?

音もさせずにこんなふうになんるなんて。

NAOが帰ってきたら、なんて説明しよう‥‥。

お兄ちゃんと僕は頭を抱えた。

カラカラとカートの音がして、NAOが帰ってきた。

慌てて2人して廊下のペットガードから少し離れた場所でお座りして

NAOが入ってくるのを待つ。

カチャカチャと鍵の開く音がして扉が開き、NAOが入ってきた。

「ただい‥‥ま‥‥?2人ともどうしたの??」

目を丸くしながらNAOが訊く。

「すまん‥‥。サッシのガラスが大変な事になった」

お兄ちゃんが項垂れながらいう。

「全部にヒビが入っちゃったんだ‥‥」

僕の言葉に、NAOは家の中へ駆け込んだ(実際にはトコトコ歩いたって感じだけど)。

そしてベランダを確認すると笑い出した。

「これ、ヒビと勘違いしちゃったのね。外側から汚れないように貼った保護シート

 の皺なんだよ。びっくりしたんだ」

お兄ちゃんと僕は安心したら気が抜け、同時に溜息をつく。

「ヒビじゃなかったのか」

「皺で良かったよぉ」

その言葉に、NAOは僕たちを抱き寄せた。

「2人の事だから、大変だと思って、警備してくれたんでしょ?ありがとね」

そう言って、ギュッと抱きしめてくれる。

NAOと僕たちの大事なお家だから、警備して当たり前じゃん。

それを喜んでくれて、お礼言ってくれるって嬉しいな。

「さ、お腹空いたでしょ?ご飯にしよ」

買い物した荷物を持ち、キッチンへ向かうNAO。

僕たちも後を追う。

何事もなくて、ほんとに良かった。

これからも、平穏な日々が過ぎていってくれますように。

その為にも、お兄ちゃんと僕は、ニャルソック(警備)怠らないぞ‼‼