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コロコロと音がして、NAOが帰ってきた。

カチャリと鍵の開く音がして、玄関のドアが開く。

「ただいま~」

お兄ちゃんと僕は、寝室から廊下へ出て、NAOを出迎えた。

「お帰り。妹さんも、モナカちゃんも、元気だった?」

1ヶ月半ほど前の話になる。

NAOはお祖母ちゃんの一周忌で、妹さんのところへ行っていたんだ。

「うん、元気だったよ。シルバーカート押すくらいに、悪くなってたのには

 びっくりしてたけど」

歩くのには問題ないけど、杖じゃ危なっかしいし、長時間歩くには楽だからと

購入していた【しるばーかーと】を押して行ったんだ。

荷物は座席下の収納部分に入れれるし、色々と便利なんだって。

押し手の部分も、NAOの身長に合わせて調節可能だし。

「兎に角、先に服着替えちゃうね」

そう言いながら寝室へ入っていくNAOの身体から、雌猫の匂いがフワリと漂う。

お兄ちゃんもクンクンと匂いを嗅いでいる。

「NAO、モナカちゃん抱っこした?」

「うん。匂う?」

僕の問いかけにNAOはちょっと笑う。

そっか。これがモナカちゃんの匂いかぁ。

「まぁね。他のこならいざ知らず、モナカちゃんなら許してあげる」

少しツンとしながら僕がそう言うと、NAOは僕を抱き上げた。

「はいはい、他のこは抱っこしませんよ~」

頬を僕の頭に擦り付けながらそう言う。

ちょっともがいて腕から抜け出すと、ベッドの上に飛び降りた。

「一周忌はどうだったんだ?」

お兄ちゃんに訊かれ、NAOは服を着替えながらもごもごと

「お坊様に読経して頂いて、二時間弱で終わったよ」

「無事終わったんだね。良かった」

「うん。その後、○○と一緒に、お墓参りも済ませてきた。次いつ行けるか

 わからないしね」

【ころな】がまだ収束したとは言い切れないし、仕方ないけど、寂しいね。

「そうそう、○○に、スマホ首からぶら下げときなさいって言われたよ。足腰

 そこまで弱ってるとは思わなかったって。転ぶと危ないし、スマホ持ってないと

 助け呼ぶにも呼べないからって」

「持っといたほうが良いぞ。なんせよく転びそうになるんだからな」

お兄ちゃんにそう言われてちょっと顔を顰めるNAO。

だけど、翌日この話をしたヘルパーさんから、怖い話を聞く事になる。

実は、担当していた方が亡くなったから、時間が空いたと言うので、来て頂く

日にちを変更していたんだ。

翌日、妹にスマホ首からぶら下げるように言われたと苦笑しながら言うNAOに

ヘルパーさんは真顔で

「そうしてください。この間亡くなった方、よく転ぶ方で、携帯持っててくれって何度も

 言ってたのに持ってなくて、転けちゃってどうすることも出来ずに亡くなったんです」

そう言われてNAOは絶句する。

慌てて斜め掛け出来るように、ボシェットに紐付けてたよ。

帰られた後、お兄ちゃんと僕はNAOの居るリビングのテーブルに座り、二人して

ちょっと睨みながらお説教をした。

「ちゃんと持ってろよ!俺たちじゃどうすることも出来ないんだからな!」

「そうだよ!頼むから持つようにしてよね!」

「はぁい。持つようにします」

それからNAOは誰かが来るとき以外は持つようにしてる。

頼むよ!僕たちにはNAOしかいないんだから。

 

 

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