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NAOが廊下の収納スペースをゴソゴソやっている。
何やってるんだろうと僕が見ていると、収納スペースの奥から
小さめの箱を取り出した。
「あった、あった。これこれ!」
楽しげに箱を開く。
中には小さな置物がいくつか入っていた。
「これ、なぁに?」
僕がクンクンしていると、お兄ちゃんもやって来てクンクンしている。
「お雛様だよ~」
NAOが箱の中に入っていた台に小さな置物を置きながら答える。
「おひなさま?」
僕が首を傾げていると
「そう。3月3日の、桃の節句に女のこの成長と幸せを願って飾るんだよ」
「女のこなんて居ないぞ?」
お兄ちゃんも首を傾げながら訊く。
「happyのために買ったんだ。玲皇が来てからは飾らなかったけど」
「なんで」
「お兄ちゃんが悪戯するからじゃないの?」
僕がそう言うと、NAOが笑い出した。
「あはは!大当たり!仔猫の玲皇が悪戯して、なくしそうだったんだもん」
それを聞いたお兄ちゃんが、渋い顔をする。
「もうそろそろ大丈夫かなと思って。皇愛も悪戯しないでしょ?」
「うん!しないよ!」
僕が元気よく答えると、NAOはうさんくさそうな目で僕を見て
「手が届かない所に飾ろう…」
そう言って、玄関のペットガードの向こうにある、下駄箱の上に飾りに行く。
信用無いんだなぁ。がっくりしちゃう。
リビングに戻ってくると、空き箱を片付けながら
「今月中は飾っとこう」
そう言うNAOの言葉にお兄ちゃんが反応する。
「3月3日過ぎたら、片付けなくていいのか?」
「へ~き、へ~き!旧暦でお祝いするからって、4月3日まで飾るところもあるし
嫁に行き遅れる心配のある娘も居ないし」
そりゃ居ないのは居ないけど、NAOはどうよ?
「私?結婚する気な~し!貰い手あるとも思えないし」
胸張って言うNAOに僕たちは頭を抱えた。
それって、胸張って言うことなの~?
「玲皇と皇愛がいれば、それで十分!」
そういうNAOの顔は穏やかだ。
まぁ、NAOがそう言うなら、それでいいや。
寝室に向かうNAOの後を僕たちも追った。