百日紅の姿 | 夢は枯野をかけめぐる

百日紅の姿


百日紅(サルスベリ )その名の通り長い間花を鑑賞することが出来、本来中国南部に自生していたが、滑らかな樹皮は幹物と呼ばれ、日本では江戸時代以降庭木として好まれてきた。


しかし、乱暴な手入れをしても花を沢山付けてくれるからか、何度も同じ所で切り戻し、枝先を握り拳のようにする瘤仕立てで剪定される事が殆どで、その姿は非常に醜く、本来の美しさが完全に失われてしまう。

現代では庭に植えたいと思う人は少なくなってきている。


ただ、知る人ぞ知ること。正しく手を入れれば、その姿は美しく維持することが出来、梢に霧がかるように咲くその花は答えてくれる。

これが本来の姿よと。


新たに管理する時点で、すでに瘤仕立てになっている場合、冬のうちに瘤を取るようにスタブカットをし、そこから出た良い方向の徒長枝で、年月を掛け枝ぶりを再構築していく。

この作業は、生育環境やその木の健康状態、個体差で、こちら側のアプローチに対して様々な反応を見せるので、経験とそこで培った勘に頼って作業する事も多い。


そこで1つの指針としている絵画がある。

鏑木清方「朝夕安居」の昼

この絵に描かれている百日紅の枝ぶりは、本来、木自身が伸ばしたいであろう方向に枝を広げ、それが簡略化されて描かれているのである。

百日紅の自然樹形と環境による変化を発見する為、様々な百日紅を見てまわり、悩み、会得したことが、この絵に凝縮されて表現されているのである。


ある程度の空間があるならば、シンボルツリーとして、または玄関庭に百日紅を植えるのも良いかもしれない。

嬉しい事に、瘤仕立ての百日紅を自然的に作り直した時、お施主さんは必ず喜んでくれている。