未去勢の雄犬に最も多く発生する腫瘍は精巣腫瘍です。
精巣は細胞分裂が盛んなため、腫瘍化するリスクの高い器官です。
精巣は生後まもなく腹腔内から鼠径管(そけいかん)を通り腹腔外へ出て陰嚢に収まりますが、陰嚢内に降りてこない精巣を停留精巣、潜在精巣または陰睾といいます。停留精巣では正常な陰嚢内の精巣に比べ常に体温により温められた状態にあり腫瘍化しやすいといわれています。
陰嚢内に収まった精巣に比べ、鼠径管内や腹腔内に停留した精巣の腫瘍発生率はそれぞれ4倍、9倍に高くなっています。
停留精巣は精巣の存在部位により手術法が変わります。
鼠径部停留精巣の場合
8ヶ月齢になっても陰嚢内にはひとつしか精巣が確認できません。今後、停留精巣が腫瘍化することが予測されるため去勢手術を行うことにしました。下腹部をよく触診すると右下腹部には停留精巣を疑う軟性のしこりが確認されました。
そこで手術は陰嚢直上と右鼠径部の二箇所からアプローチしました。
摘出した精巣にはすでに大きさの違いが認められ、停留精巣(左)が腫大しているのが分かります。
腹腔内停留精巣の場合
1歳1ヶ月齢時に去勢手術を希望されましたが陰嚢内には精巣をひとつしか認めません。下腹部を触診しても鼠径部には精巣らしいしこりは触知せずに開腹手術を実施しました。
膀胱の裏側に停留精巣を確認、摘出しました。
未去勢の雄犬を飼っている方は睾丸を触って確認してみてください。
左右で大きさや硬さが違ったり、陰嚢内にひとつしか確認できない場合は獣医師にご相談ください。