ビスフォフフォネートは多発性骨髄腫による骨病変および固形がん骨転移による骨病変、悪性腫瘍による高カルシウム血症、骨粗しょう症等に効果のある薬です。人医領域ではこうした骨病変に対して実用化されています。


BP

2007年の日本獣医がん研究会でも話題になり、激しい痛みを抱えた骨病変のある犬や猫にも使用することで効果的に痛みを緩和できる治療法として紹介されました。

それまでの痛みに対する治療はステロイドや、非ステロイド系消炎鎮痛剤、モルヒネなどの麻薬系鎮痛剤などでしたが、ビスフォフフォネートは骨が溶けていく原因を抑えて鎮痛効果を示すため非常に効果的です。

その作用機序は骨組織を破壊・吸収する破骨細胞のアポトーシス誘導と機能喪失させることです。

その他、直接的な抗腫瘍作用ももっています。腫瘍細胞の転移の抑制、腫瘍細胞の増殖抑制とアポトーシス誘導、血管新生抑制効果などがあるといわれています。

治療は約30分程度の静脈内点滴注射で、大きな副作用の心配もありません。治療薬は高価ですが、治療の価値は十分にある薬です。


実際の症例


骨病変

この症例は腰痛による震えと元気・食欲の低下により来院しました。X線検査の結果、腰椎を含む複数の骨溶解病変を認め多発性骨髄腫が疑われました。骨溶解により病的骨折を起こし、痛みのため動くこともできません。そこで、ビスフォスフォネートの治療を行いました。残念ながら病態の悪化でその後亡くなりましたが、注射1週間後頃には痛みが取れて仰向けに眠ることもできました。


まだ、使用症例数の少ない治療ですが、骨溶解による耐えがたい疼痛の緩和に可能性が感じられました。