Chage's Christmas~チャゲクリ~

Chageさんのニューシングル「Chage's Christmas~チャゲクリ~」が11月24日に発売されました。
Chageさんの35年ぶりのクリスマスソングと話題になっています。現在、絶賛プロモーション中。全国のラジオ番組に数多く出演されていますね。
収録曲はスローナンバーの「1224」(イチニイニイヨン)と軽快なテンポの「クリスマス予報」の2曲です。
また「Chage Live Tour 2021~Boot up!!」の9月18日の豊洲PIT公演の様子と最新インタビューの映像特典付きという体裁です。
今やCDは+αの付加価値がないと出すことも難しくなってきました。音楽はサブスクやYouTubeで(ほぼ)無料で聴くのが当たり前の時代になっています。

この「チャゲクリ」の2曲も各種サブスクのサービスで配信されており、CDを買わなくても聴くことができるわけです。私ももちろんCDは購入してますが、Spotifyを利用して「チャゲクリ」を聴くこともあります。

CDのような円盤を購入することは「推し」に対する感謝の気持ちを伝える投資のような時代になっているのかもしれません。

 

「1224」のミュージックビデオはこちら!

 

さて、収録されているクリスマスソング2曲を細かく聴いてみました。
特にリードトラックとなっている「1224」を中心にレポートします。

「1224」の制作クレジットは作詞が松井五郎さん、作曲がChageさんのゴールデンコンビによるもの。
最近はこのコンビの楽曲は「equal」や「たった一度の人生ならば」など詞が先に書かれたものが多いようですが、今回は間違いなく曲が先でしょう。
理由は後で詳しく述べますが、曲の構成によります。
「1224」は独特の曲構成なんですね。
イントロ~Aメロ~Bメロ~Cメロ~Aメロ~間奏~Bメロ~Cメロ~Dメロ(大サビ)
いわゆるサビが最後まで出てこないのです。4分34秒の楽曲でサビが3分19秒までないのです。しかもサビのメロディーを2回繰り返して曲はそのまま終わります。つまり、サビは1回しかないのです。
先ほど音楽はサブスクやYouTubeで聴くことが当たり前の時代になったと書きました。
現在のロック・ポップスはサブスクで聴いてもらうための戦略的な楽曲構成になってきています。サブスクでは一定の時間再生されれば楽曲再生回数にカウントされます。その再生回数がヒットの基準ですし、楽曲の最初の30秒に「いちばんおいしい部分」を持ってきてリスナーの心をつかもうとするわけです。
その結果、イントロは短くかつインパクトのあるものになります。そして、サビが早めに登場します。また、楽曲の時間も短くなる傾向があります。
かつてのCDが普及した時とは正反対ですね。収録時間の制限がなくなって、チャゲアスのシングルも5分6分は当たり前、7分越えをすることすらありました。
一方、現在の世界を席巻しているBTSの「Butter」なんて2分44秒しかありません。1960年代のThe Beatlesの「Get Back」よりも短いんですよ。

長くメロウなイントロ、なかなか出てこないサビ。
とにかく「1224」はサブスク全盛の時代に逆らっているのです。絶対に意識してやっていると思います。意外にChageさんもカウンターカルチャー的な存在なんです。

Chageさんによる楽曲はメジャー7thの響きが心地よい70年代シティーポップス風。部分転調やクリシェ(ベースの半音下降)などが散りばめられています。
以下のコード進行は耳コピで適当に聞き取ったものですから正確ではありませんが参考までに。

Aメロ
Dmaj7-Em7onB (×3) (いつサンタクロースを~)
A6-Bm7(×2)(夢も遠いようなBlue~)
Bメロ
Gmaj7-D(×2)(いまでもそう Close your eyes~)
Cメロ
B♭-D-B♭-C-A (幸せの答え合わせは~)

サビまではおそらくこんな感じです。メロディーも半音階の移動が多く、歌う時に音が取りにくい人もいるかもしれません。
メジャー7コード全開の楽曲。過去のChageさんの楽曲ではあまりイメージがないです。ASKA曲だったら「no no darlin'」なんかが同じタイプの楽曲ですね。
コードの基本の3音にメロディーが収まっていかないので独特の浮遊感が生まれてるわけです。

そしてDメロの大サビです。ここの切り替えが上手い!
コードはおそらくこんな感じっぽい。
D-DonC#-Bm7-BmonA♭-Em-EmonE♭-G-A
それまで浮ついたモヤがかかったような感じから一気に世界が開けた感じになりますよね。
メジャー7thや6thの不協和音的な半音ずらしたメロディーからわかりすいメロディーに転換しているからです。
でも、コード進行はベース音が半音ずつ下がっていくクリシェの技法を使っているので切なさは倍増。
しかも、歌詞は「クリスマス クリスマス」とシンプルな剛速球。おそらくChageさんのデモテープの時点でここは「クリスマス クリスマス」って歌ってたんじゃないかな。
このベースが半音ずつ下がっていくクリシェの技法を使った楽曲は世の中に数えきれないほどありますが、超定番クリスマスソングのそれが一番有名だと思います。
そう、山下達郎さんの「クリスマスイブ」です。
クリスマスソングということでヤマタツをリスペクトしたんじゃないかな、って思ってます。

A-B-C-A-B-間奏-C-D-D
この独特の曲構成が詞先ではなく、曲が先にできたと考える最大の理由です。


さて、松井五郎さんの歌詞はというと。
決して明るいクリスマスソングじゃないです。
孤独や挫折を味わっている人に願いを込めているかのような内容です。
「夢も遠いようなBlue みんなひとりぼっち」
「月まで行けたのにまた道に迷う」

でも「思い出は教えてくれる いま僕らが行く先を」
歌詞カードをまじまじと眺めているといろいろ深読みしちゃうな。五郎さんが書いた詞だし。チャゲアスのことが念頭にあるのかな、なんて。考えすぎかな。


続いて「クリスマス予報」です。
作詞は澤地隆さん、作曲はChageさん。こちらももう一つのゴールデンコンビです。
こちらは「1224」とは打って変わったハッピーオーラ全開のナンバーです。
いわゆるモータウンサウンド。60年代アメリカンポップス風のドッタンドッタンと跳ねたリズムですね。
このリズムの超定番クリスマスソングがありますよ。
そう、マライア・キャリーさんの「恋人たちのクリスマス」です。
絶対に意識していると思います。誰もが思い浮かべる、ベタな「クリスマスソング」を作るつもりで作ったんでしょう。
 
澤地隆さんの歌詞の内容はすでに伝えられているように35年前の『Snow Mail』の「ボニーの白い息」の続編。
あの恋人たちは結婚したんですね! 子どもがいるんですね。「若かった頃この坂道で似たような思い出」ってあるから、たぶん、子どもは女の子です。小学校の5年生くらいかな。一緒にお出かけしているみたいです。ママのためにクリスマスプレゼントでも買いに行ってるのな。
…なんて、妄想しちゃいましょう。

どちらの歌もクリスマスソングとしての「型」を意識した上で、Chageさんらしいひねりを入れつつ「わかりやすく」仕上げているという感じかな。
令和の時代に歌うにふさわしいクリスマスソングです。
たくさんの人に聞いてほしいです。

最後に。
2曲ともプロデュースは『Boot up!!』に続いて島田昌典さん。
島田さんがChageさんをプロデュースするようになって一番変わったなと思うのは歌声の質感です。
現在のChageさんの声質を最高の状態で録音してくださっていると思います。
CDに収録されているそれぞれの楽曲のInstrumentalを聴くとよくわかりますよ。
Chageさんのコーラスが入っていて、そのハモリの声がすばらしい!
サブスクじゃ聴けないインストVersionを聴くためにもみなさん! CDを購入しましょう!

 

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