ASKAソロアルバム『Too Many People

2017.2.22発売

 

凄い1枚が世に放たれましたよ。

さて、これを書いているのはまだ発売日前日の2/21であります。おそらくUPする時間はすでに22日になっていると思うのですが、フラゲして聞き始めて5周目の今の気持ちをレビューとして記録しておこうと思いました。そんなわけでまだ聞いていない人は完全ネタバレですのでお気をつけください。ぜひとも聞いてから読んでください。

 

 

まずは内容の前にアルバム発売に至るまでの雑感をつらつらと綴ります。

みなさん。諦めたことはなかったですか? ASKAさんの歌を聞く日はもう来ないんじゃないかと。

私はあります。

「2016.11.28」

再逮捕のニュースが流れていたよ、と身近な人の口から聞いて急いでインターネットを開いて事実だとわかったあの時です。

「終わった…」と呟きました。すべてが終わったと思いました。あの瞬間だけは。

それから約3カ月。CDショップで『Too many people』を手にしました。

 

『700番 第二巻/第三巻』は読んだ感想は先日UPしました。ASKAさんの視点からこの1年間におきた出来事を書いたものだと理解しました。論理的かつユーモアも交えて書かれた良書だと思いますが、あまり読み返すことはないと思います。

ブログはあまり読んでいません。ななめ読みって感じです。何よりもコメント欄が不快で…。肯定派も否定派も熱がこもりすぎていて…。見えないようにしてくれたらいいんですが見えちゃうので見にいかないようにしています。

 

『Too many people』

タイトルに不安を感じていました。その理由は前回書きましたので繰り返しません。

期待している自分の心に不安を感じていました。ハードルを上げすぎない方がいいんじゃないかと思っていました。

ASKAファンでありながら、ASKAという歌手を過小評価していたのは自分だったようです。

傑作です。名作です。まだ買ってから7時間くらいしか経っていませんが断言します。

ハードルを上げすぎても大丈夫です。スゲぇ曲が13曲も入ってます。

 

『ONE』の音の質感に『kicks』のスリルを加えて、『SCENE』シリーズの甘さも混ぜ、『NEVER END』のように様々な曲調の13曲。しかも、『PRIDE』や『TREE』の世間が思い浮かべるチャゲアスっぽいコード進行やアレンジという衣装をまとい、そこに新たな領域に入ったこれまで以上にEmotionalなVocalが乗っかっている、という感じです。わかります?

 

1曲目の「FUKUOKA」は実質的なシングルカット。この歌の持つ求心力が世間の雑音に勝ったからこそ、このアルバムが普通に流通することになったのだと思います。「俺は東へ向かうつもりだ」とデビュー直前に歌った若者が還暦直前に「僕はここにいる」と故郷のことを歌ったんですね。野球の話をするタクシードライバーのくだりを聞いて私は中島みゆきさんの「タクシードライバー」という歌を思い出しました。興味のある方はそちらもお聞きください。

 

2曲目の「Be Free」は1回目の逮捕の前にファンクラブでデモ音源CDが届けられた楽曲です。私はこの歌を長く聴けませんでした。1回目の逮捕以来一度も聞いていませんでした。二度と聞かないと思っていました。今回のアルバムにこの歌を収録すると聞いて正直な話、怒りすら覚えました。

今回のVersionでは1カ所歌詞が変更されています。

「僕は知らないことばかりで → 僕は唇噛みしめたまま」

そうなんです。私がデモVersionに怒りを覚えていたのはその一節だったのです。ASKAさんもそうだったんでしょう。歌の中で嘘をついてしまったことを後悔していたのではないでしょうか。この一節が書き換えられたことで大きく印象は変わりました。

サウンドはCHAGE and ASKAです。シンセサイザーによるストリングスが壮大です。Vocalもデモのどこか棒読みな感じの歌い方とは全く違う生気に溢れたものに変わりました。最初に聞いた時に全身の毛がぞわっと逆立ちました。Chageさんの高音コーラスが空耳で聞こえてくるのは私だけでしょうか。

 

3曲目の「リハーサル」はミディアムテンポのマイナーロック。バラードばっかりだったらどうしようと思っていた浅はかな私の不安を吹き飛ばすスリリングな楽曲。歌声が力強い!

「やりたいことをやる やりたいように」

 

4曲目の「東京」は16ビートの跳ねたさわやかなメロディーが印象的。歌詞は泣けます。初めて聞く人はハンカチの用意をしてください。我々ファンのことを歌っていると解釈します。勝手に、ね。この曲も私の頭の中ではChageコーラスが聞こえるのです。

 

5曲の「X1」はYouTubeでも公開された楽曲。『700番』の中でタイトルの由来は詳しく語られています。これも私たちファンのことだと解釈しました。勝手に、ね。リズムはよくあるパターンなんですが、このメロディーはなかなか出ないですよ。サビ後半のベースの動きも気持ちいいな。

 

6曲目の「それでいいんだ今は」の歌詞もハンカチ必携。おそらくブログで語られていたギリギリで再録音した3曲のうちの1つです。アレンジが澤近泰輔さんである3曲は演奏メンバーもベースが恵美直也さん、ドラムが今泉正義さん、ギターが狩野良昭さんというチャゲアスのバックの3人だからです。ドラムとベースの音が他の江口さんとメッケンさんとは明らかに違います。今泉さんのストトン…というフィルを聞くだけで涙腺が…。あぁ、チャゲアスの音だ…。

 

7曲目の「Too many people」はタイトルトラック。マイナーの重たい曲調。過去の楽曲で言うなら「judge by myself」や「kicks street」的な存在かな。マスコミや世間のように見えないけど大きく聞こえる声を「too many people」と歌ったように聞こえます。そして、私もその内の1人。

 

8曲目の「と、いう話さ」はブログでも語られていた「NOW」的な存在の曲。前半の低音VocalがCoolでかっこいいのですがサビに入るといつものASKA節になります。歌で使えるKeyの広さをこれでもかと見せつける凄まじい歌唱力。凄いですよ、これ。

 

9曲目の「元気か自分」は再録音3曲のうちの2曲目と思われます。2曲マイナー調が続きましたのでメジャーな曲調でほっとさせます。ASKA比喩全開のタイトル通りの歌詞です。

ただ一つ疑問が…。演奏クレジットが「Bass:恵美直也、Bass:恵美直也」と恵美さんの名前が2回書かれています。エレキギターの音が聞こえますので「EG:狩野良昭」の間違いではないでしょうかね。これは。

 

10曲目の「通り雨」はASKAさんらしい日常ラブソングです。「君が家に帰ったときに」なんかが好きな人はきっとお気に入りの1曲になると思います。59歳でこんな甘いラブソングを照れもなく書けて歌えてしまうなんて…。

 

11曲目の「信じることが楽さ」は歌詞が痛いというかASKAさんの本音が聞こえる感じです。多くの人に裏切られた結果の薬物事件だったはずだったのに「疑うことは寂しいことなんだ 人を信じることが楽さ」と歌います。「信じたい」と歌うのではなく「信じることが楽だ」と歌うのがASKAさんなのでしょう。そして、次のフレーズで号泣必至ですのでハンカチのご用意を。

どんなに離れても 僕は帰って来る その繰り返し

曲調は70年代フォークを彷彿とさせるんです。中村雅俊さんが歌いそうな感じです。

 

12曲目は「未来の勲章」は8ビートの王道ポップス。サビのコード展開がASKAさん節というかチャゲアス的。Chageさんがハモリを入れたら… って考えてしまうのを許して欲しいなぁ。

クールでシュールでキュートな 夢を守って

素晴らしいフレーズです。

 

13曲目の「しゃぼん」は3曲目の再録音でしょう。そして、名曲です。こんな近く感じる歌声がこれまであったかなぁ。少し荒れ気味に歌われるシャウトが胸を打ちます。歌詞はあえて引用しません。聞いてください。聞きながら書いていますが泣けて仕方ない。

 

何度も何度も書いてきましたが私は歌手ASKAのファンです。

わかりきっていたことですがそのことを思い知らされました。

ルックス? どうでもいいです。そんなもん。

ぶっちゃけて言えば、不倫だの、お茶だの、文春だの、どうでもよくなりました。

いい歌がここにありました。13曲も。

戦慄します。この作品がお蔵入り寸前になっていただなんて… 

 

このCDは売れてほしいな。世の中の多くの人に聞いてもらいたい。そして一緒にChageさんの『Another Love Song』も聞いてほしいな。とんでもない才能の2人が一緒に組んでやってるのがチャゲアスだと改めてわかってもらえると思います。

 

演奏者のクレジットにさまざまな事情で名前を出せない人がいるようです。

ラジオやテレビではあまり楽曲は流れないでしょう。(でも、ワイドショーでは流れるでしょう)

楽曲を聞いていない人はCDや本を出してお金儲けをすることを批判するでしょう。

歌詞の一節を切り取って好き勝手に悪口を並べ立てるでしょう。

 

まだまだ始まってはいません。

On Your Markと聞こえた状態でしょうか。今は。

 

でも、待ってて良かった。ほんとに良かった。

ではあと1周聞いたら寝ます。寝不足だけど明日は頑張れそう。