ライブが始まりメールボンドのステージをまん前で観ようと1つ前のバンドから一列目をキープした私とあいちゃん。

1つ前の初めて観るそのバンドは「ボンボンズ」という4ピースバンドで、メールボンドとは違ったもう少しお上品な雰囲気のバンドだったけれど、何だか耳に残る音楽だった。

そこでベースを弾いていたのがさっき外をうろうろしていた手拭いの男の子でした。


そして、私とあいちゃんはまんまとその手拭いの彼にくぎずけに…


だって彼ったら凄いキラッキラした笑顔で楽しそうにベースを弾くの、そしてなにより好物の肩までの重い黒髪に犬顔。
近くでみたらこんなにも素敵だなんて!!
ベースの腕も凄くてプレイがカッコいい!

私たちは一瞬でファンになるのでした。


ライブ後、あいちゃんが手拭いの彼に買ったCDにサインをしてもらっている時名前を聞いていたら、何故か片言で「オレ、セイ」と言っていました。

このセイとの出逢いが私に波乱の日々をもたらすなんて想像もしていませんでした。
そもそも、こんな事になったのは自業自得だったのです。

今なら納得してしまう吉井くんの行動も、当時の私には理解出来なかった。

自分のバンドを追っかけてくる女とメールやり取りしたり、ライブ後バンで家まで送ったり、そんなこと下心なしにするわけないのです。

今まで近づいてきた女の子はきっとその気がある子ばかりだったのでしょう。


今ならその辺りのさじ加減が出来るくらいのいい大人になったので、こんな事態にはならないけれど、あの時は浮かれたおバカちゃんだったので最悪の事態を招いてしまった。


勘違いさせてしまった吉井くんにも申し訳ない。



それでも私はライブを観に行くことを止めはしなかったのです。



ある日渋谷のライブハウスにメールボンドを見に行った時のこと。


仲間と待ち合わせの時間より早く着いてしまった。

時間を潰す為にライブハウスの脇にあるスタバで抹茶フラペチーノを飲んでぼーっと外を眺めていました。ダイちゃん通りかからないかなぁ、なんて思いながら。

視界に入るのはライブハウスの前を行ったり来たりする白いTシャツに首に手拭い巻いたサンダルの男のひとだけで、ダイちゃんは見当たらない。


ずっと見ていたら、あまりにその手拭いの人がうろうろしてるもんだから何してるんだろうって気になってしまった。

結局手拭いの人は私が友達に会うまでうろうろしていました。
勇樹くんがカバンをごそごそ探ってチョコレートを取り出すと私にくれた。

「悲しい時はチョコレート食べなよ」

そういいながら私の靴下を引っ張って脱がせる勇樹くん。

靴下を黙って脱がされている自分が可笑しくて笑ってしまった。

そこへダイちゃんが部屋に入ってきて笑っている私を見て開口一番「笑ってんじゃん!」と強くいい、
勇樹くんが「せっかく泣き止ませたんだから、もう止めてよ」とダイちゃんを制した。

始めから何故だか私はダイちゃんにあまり良く思われていないのだと思っていたけれど、この時に確信。


ダイちゃんを交えていきさつを話すと、ダイちゃんも私の言い分にも耳をかしてくれた。

「取り敢えず、吉井くんがもぅ終わりだよって言ったまま部屋にこもってるから様子見に行こう」
とダイちゃんに促され吉井くんの部屋へ。

ドアを叩くもいっこうに返答がないので私達は諦めて部屋に戻るのでした。


これを期に吉井くんとはメールをしなくなった、そしてトラウマでダイちゃんと会話することも出来なくなってしまった。