もものかんづめ。
小学校5年か6年の頃。
さくらももこのエッセイ本を
隣の席の男子が持っていた。
男子から
貸してもらったか?
貸してもらえなかったか?は
記憶にないのだが
母にその本を強くねだったのは
鮮明に覚えている。
あんた、今から買い物行くけど
なんか欲しいもんあるー?
あ!さくらももこの、もものかんづめ買ってきてー!
はいよー。
母が買い物ついでに
さくらももこのエッセイ本を買って来てくれるというので
私はワクワクして待っていた。
ねー、さくらももこの、もものかんづめなかったよ。
店員さんに聞いたけどわからないって言われた。
うそ~そんなわけ…
と、言いかけた口が
母の手元を見た瞬間に閉じた。
だから代わりに買ってきたと言わんばかりに、桃の缶詰が置いてあった。
あのね…
食べ物じゃなくて
本なんですけど?
なに~それをはよ言わないかんがね。
まったく恥ずかしい。
その後、無事に私の手元には
さくらももこの、もものかんづめというエッセイ本が来た。
ややこしい題名をつけたものである。
大人になってから
久しぶりにこの本を手に取ったが
小学生がこの本を
なぜ夢中になって読めたのか?
かなり爆笑していたので
内容は一切覚えていないにも関わらず
この本は面白かったという記憶だけは
残っている。
不思議で仕方ない。
今読むと新刊を読んでいるような気分。
やはりさくら氏の本は面白く
夜中に読むと
まるでガキ使の笑ってはいけないに参加しているかのごとく
笑いをこらえるのに大変なくらいだ。
しかしエッセイは大人向けな内容だ。
それを頭の悪い小学生だった自分が
よくもまあ抜けぬけと
爆笑できたもんだなぁと
我ながら感心するのだった。
さくらももこのもものかんづめは
母の珍事件の思い出とともに
今も、これから先も
私の心に永久に保管されていくに違いない。