極めてアンニュイな雰囲気であったが、その時は別段ユルイとは思わなかった。彼の掌の上にふわりと乗せられユラユラ揺れなら何処か連れていかれ、ついた先は、ジュンスと言ううるさい女中のいる屋敷だった。ジュンスは吾輩を追い出そうとユチョンに文句を言ったが、騒ぎを聞いて中から出てきた主人に置いておくよう言われしぶしぶ吾輩を諦めたのだ。ここには、今まで一緒にいた兄弟のキュヒョンや母親さえおらず吾輩は一人、突然畳の上に放り出された。主人は吾輩をひょいと摘み上げ手の上に乗せ、訝しげにマジマジと見つめている。人間とはなんとおかしなものだろうか。吾輩の目の前に近づけた主人の顔は、小さな目がキラキラ光りポッテリとした口の下は何やら青くザラザラついていた。
この家の主人は教師をしており大学とやらでダンスを教えてるらしい。家の者は偉くたいそうな仕事をしていると思いこんでいるが実際は甘い物を食べ、散らかした部屋の中で吾輩をひざに乗せイビキをかいて寝ている始末だ。世の中で言われている胃の痛みとは無縁の無神経な有様なのだ。

