帰省して約30時間目。
私は風呂に入っている。
仕事用のケータイは防水仕様のため
湯舟に浸かりながらのブログ更新。

毎日なんかしら書き続けられるのは
我ながら珍しい。
よっぽど溜まってるのかな-というと、
第三者的な見解はさておき、
実は今日はそんなでもない。


昼間、約2年ぶりに
ばあちゃんの家に行ってきた。
ばあちゃんはまもなく90歳。
少々、耳が遠くなりつつあるが、
ありがたいことに元気いっぱいだ。

この人と親父が生きてるうちは、
あたしも頑張って生きなきゃいけないなぁと思ってる。

音信不通の弟のことは
現状では放置状態なのでさておき、
何度か死んでしまおうと思った
私の手を止めてくれたのは
間違いないなくこの人達だと思う。

十分に親不孝な私だが、
そこの道だけは踏み外さずにいるつもりだ。


話しが逸れたが、
ばあちゃん家に行った。

で、従姉妹親子が住んでる離れでは
同い年の従姉妹と、
そのお姉ちゃんとおばさんが迎えてくれた。
おじさんが2年前に他界してから
この家には女しかいない。

数年前に結婚して3児の母であるお姉ちゃんはともかく、
私と同様に売れ残りである従姉妹は
婿養子を切望されている。

長女のくせに家を離れて好き放題やってる私が
人のことは言えないが、
大変だなぁと思う。

だって、そんな条件で男を選ばなきゃだなんて
余計にハードル上がりそうじゃない?
『婚活時代』なんて言われてる
このご時勢にさ。


なーんて、他人面してたら
『レモンちゃんはいつ実家に帰ってくるの?』という
ツッコミを受ける。
山本高広ばりにキタ----って感じよね。
予想はしてたけどさ。


『お父さんも1人で淋しいはずだから、
面倒みてあげなきゃ。
ついでにお正月だけでも
ばあちゃんをそっちに呼んで
面倒見てもらえると
助かるんだけどね~。
こっちでちゃんとした会社に就職して、
パートでもいいからさ。
そろそろ親孝行したら?』

……おばさんの言葉を聞くうちに
吐き気がしてきた。

お得意の被害妄想かもしれんけど、
『お前だけ煩い老人の世話を放棄して
好き放題やりやがって』という
嫌味がビリビリと右耳に刺さる。

老人と親孝行すんのにパートで養えるかよ、馬鹿野郎!
出版だって一応、マトモな仕事なんだよ。
フリーだけど、それなりに真面目に働いてるんだよ!
ライターなめんな!


沸き起こる怒号を押し潰すように
そうですね~と笑って場をごまかした。
が、胃のムカムカと肩にのしかかった空気は晴れない。



従姉妹の末っ子がじゃれついてきたので、
さりげなく場を逃れられた。
ふぅ。


この子くらいの頃は
なんも考えずに遊びに来れたが、
さすがに30歳目前ともなると、
そうはいかないなー。

三十路間近のあたしに『お姫様』なんて
言ってくれてる無邪気な5歳の王様は
将来こんな思いをしなけらいいな~。


これまで好きだった田舎とか、
家という存在が重くのしかかる。
30代というのはそんな時期なのか。




のぼせてきたので
続きはまた後で。

べろんべろんに酔いつぶれれば寝れる。

それは甘い考えだった。

飲んでも飲んでも酔わない。

燃費悪いね、自分。

エコじゃないね。

キャバクラ時代だったらどんなに稼げただろうね。


とりあえずベッドにもぐりこむが、

今度は涙が止まらない。

おまけに気付けばもう朝だ。

ああ、もう嫌だ!


外は今日も晴れ。

あたしも晴れたい。


ケータイが鳴る。

メール着信。

もちろん彼からではない。

中学時代の友人からだった。


内容は「私も明日帰るから遊ぼう!」ってこと。

ああよかった。

帰省の楽しみが増えた。

腐ってる場合じゃないよ。

そろそろ準備しなきゃ、と、とりあえず起きてみる。


で、着替えて髪を整えて、

鏡を見てみる。

…………お岩さんがいた。。。。

なんとなく笑ってみる。

が、目が笑えない。

どう見ても死んだ顔にしかならない。。。


最悪だ。

もう何もしたくない。

こんな顔誰にも見せたくない。

家を出るのも帰省するのも嫌だ。


熱が出たとウソついて、帰省やめてしまおうか?

……ああ、ダメだ、ダメだ。

ますますダメ人間になってしまう。

たかが、男にフラれたごときで、

荒んでる場合じゃないよ。

私にはやることがたくさんある。


正月休み中に片付けとく仕事もあるし、

家出る前に掃除機くらいはかけたい。

流しまわりも片付けて、

溜まった洗濯物も室内干しでいーから干してきたい。


帰ってきてからヘコまないように、

極力何もしないで済むようにしておきたい。うん。


しかし、お腹が痛い。

食欲もない。

こんなんで体壊すとか、ありえないよね。

ってか、こんなんで壊れるハズないし。


トイレに行ってみる。

で、立ち上がったら便器の中が真っ赤で焦る。


血尿!!!!?

…………いや、生理でした。

帰省するのがますますめんどくさい。



なんとか帰省したとして、

私は明るく振舞えるのだろうか?

できないなら帰りたくない。


もう一度鏡を見て笑ってみる。

……やっぱり笑えない。


「グーパンチと頭突きが原因でフラれました」

こんなギャグみたいな別れ方ないじゃん。

格好のネタなのに。

笑い飛ばしてしまえばいいのに。



今はまだできない。


エアコンで乾燥気味の部屋の中、空っぽの皿が4枚、

食べかけの炒め物の器が1つ、

ダシやニンニクなどのニオイを漂わせる。

床にはクラシックラガーの空き缶3つ。

さらに、これから開けるハイネケンと、

こないだ男が飲まずに残してったスミノフアイスが1本ずつ。


エアコンの設定温度は28度。

だが、手でぐっと握ったボトルはほどよく冷たい。

冷蔵庫やベランダでキンキンに冷やすより、室温放置の方が好き。

体が冷えずに済むから。


だったら最初から飲むのなんてやめればいいじゃん、とも思うが、

飲まなきゃやってらんない。

飲まなきゃ泣いてしまいそう。

いや、すでに泣いてるけど。


元旦早々サブイね、自分。

ため息をつきながら、目に付いたフライドチキンの空き袋と、

からっぽのアイスクリームのカップをコンビニの袋に押し込む。


ふと、食べ過ぎたかなー? と思い、

カロリーカットのサプリメントを飲み込む。

好き放題飲み食いしたくせに、

こんなんで都合よくヤセるわけないじゃん。

わかってるけど、おまじないみたいな気持ちで飲んでしまう。


ちなみに今日のつまみは、

カキの土手焼きと鶏モモ肉の照り焼き、

レンコンとシシトウの炒め、ヤマイモとナスのサンショウ炒め、

ファミマのフライドチキン、雑煮

デザートにコンビニのバニラアイス。


以上。



ファミマのチキンと雑煮とアイス以外は全部昨日作りおきしておいたものだが、

改めて献立を並べると、バランスの悪さが目に付く。

炒め物2品とか、明らかにオイリーすぎる。

まぁ、誰に食べさせるわけでもないから構わんが。



本当は食べてもらうつもりだった。

けどねー、その予定が急になくなったからさ。



* * * * * * * * * * * * * * * * * 



彼とは本当は昨日から一緒にいる予定だった。

一緒に年越しそば食べて飲みながら、ダウンタウンでも見て、

うちの近所の神社に初詣行って~、みたいな。

ありふれたカップルみたいに平和な正月迎える予定だったのよ。


それがねー・・・・・・

まさに晴天の霹靂。

「気持ちが冷めた」ってさ。


毎日来てたメールがぴたりと来なくなって、

「ちょっとだけ声聞きたい」というメールも無反応で。

ダメ元で電話したら予想通り、そっけない感じで。

まぁ、私が悪いんだけどね。


先日、友達カップルと飲みに行ったとき、

私は調子に乗って飲みすぎてやらかした。


まず冗談半分で振り回した右手が窓ガラスにクリティカルヒット。

幸いガラスが割れはしなかったけど、

翌日は右手の薬指と小指の付け根付近が赤黒く腫れ上がった。

痛む患部を見て、ああ、やってしまった……と初めて気付いた。

そして不安が湧き上がった。


しかも、その不安は見事に適中。

前の一件に加え、私は笑いながら彼にグーパンチと頭突きをかましたらしい。

こっちはまったく覚えてなかった。

これがヤバかったらしい。

「肉体的よりも精神的にダメージを受けた」という言葉が、

「いま部屋の片付けをしてるんだ」というメールと一緒に届いた。


-片付け。

ああ、あたしも一緒に片づけか。

今年の汚れは、今年のうちにっていうもんね。


被害妄想に陥りながらも、

普段から酔うと手や足が出るということをカミングアウトし、

「一度、ちゃんと話したい」というメールを送った。

間違いなく10:0で悪いのは私だろうが、

このままメールだけで終わるなんて嫌だ。


「器が小さくてごめんね」とメールの文中にあったが、

それに対しては申し訳ないけど「確かに」と思った。

同時に、本当にこれだけで冷めてしまったのか。

ひょっとしたら他に原因があるのでは? とも思った。


すべては電話で話そう。

そう思い、ぼーっと部屋でひざを抱えるうちに年が明けた。


近所の神社から年明けの太鼓を叩く音が聞こえてきたので、

なんとなく外へ出た。


そのまま初詣の行列に並び、お参りを済ます。

細かい願い事なんて、何も考えられなかった。

ただ、「幸せになりたい」。

それだけを願った。



帰り際、コンビニに向かって歩いていたら携帯が鳴り出した。

「あけましておめでとう」

彼からだった。



「やっぱり無理だよ」

彼の声は沈んでいた。

「ねぇ、本当にそれだけ?」と聞くと、「それだけ」と彼は答えた。

「私のどこが好きだったか教えて」と聞くと、

それについても私がそこそこ納得するように話してくれた。


それだけに余計悲しかった。

単純な理由なだけに、自分のアホさがものすごく悔しかった。


「次は殴っても平気な人探した方がいいよ」と言われ、涙が出そうになった。

「次なんて、いま考えられるわけないじゃない」そう言うのが精一杯。

全身から力が抜けるのを感じながら、

ふらふらと路地に入り、そして座り込んだ。

顔見知りが多い近所で、今の顔を知り合いに見られるのは嫌だった。

電話はつながったままなのに、しばらく言葉が出なかった。

吐き出す息と一緒に時間が凍りついたような気がした。


神社から響く太鼓の音が電話越しに聞こえたのか、

「外にいるの?」と聞かれ、ようやく「初詣に行ってた」と口を開くことができた。

「こんな時なのに、おみくじ大吉だったよ」というと笑ってくれた。


その後はしばらくとりとめのない話をした。

彼の部屋の片付けの話とか、私が通ってる岩盤浴の話とか。

私が家についてからは、リアルタイムで放映されている

お笑い番組を見ながら話したり。

何もなかったみたいなトーンで、普通に笑いあった。

さっきまで別れ話してたなんてウソでしょ? みたいな。


電話を切る直前、

「私は別れたくない」と正直な本音は伝えた。

「うん」とだけ彼は答えた。



2日から4日まで私が帰省するため、

直接会っての具体的な話はその後ですることになった。

「何かあれば俺はヒマだから言ってね」と彼。

単なる気遣いかもしれないのに、

「さっさとケリつけたいだけなんじゃない?」と思ってしまうのは私の悪いクセだ。

その言葉を発する代わりに「ありがとう」とだけ言ってみた。



電話を切ったあとは寝付けなかった。

気がついたら朝になってて、そのままちょっとだけ意識が飛んで、

起きたらもう夕方だった。


普通の生活の中で繰り返せば、間違いなく不眠症に陥るサイクルだ。

正月休み中でよかった。


ケータイを開くと、友達からの年賀メールが数件届いていた。

彼からのメールは……予想通りナシ。


自分からメールを送るべきかどうか悩んだ末、

デコメールで年賀メールだけ送ってみることにした。


「あけましておめでとう。今年もよろしく! って言えたらうれしいな」

……送ってはみたものの、なんか重いよな~。

本当、バカな女。

けど、こんなに自分の気持ちを素直に出せた恋愛は、初めてかもしれない。



当然の如く、返事はまだこない。

ヤツが置いていったスミノフアイスが空いた。

こんな甘い酒、自分じゃ絶対買わないのに。


不意に、つけっぱなしにしておいた爆笑レッドカーペットのギャグがツボにハマり、

思わず笑ってしまった。

例の一件がなければ、一緒に見て笑えてたのだろうな。


ハイネケンの栓を空け、中身をぐいっと煽る。

炭酸が鼻に抜けて、涙がこぼれてきた。