『私も人を斬りたい!』
敬愛する塚本晋也監督最新作。『野火』は個人的にハマらなかったのだが、今作は良かった。
まず、音が素晴らしい。鉄を打つ音、刀を抜く音、炎が爆ぜる音…。そして『鉄男』以来、塚本作品に必要不可欠な、故・石川忠のインダストリアルな音楽が、耳に実に心地良く響く。これだけで映画館で観て良かったと思わせる作品になっていた。
幕末を舞台とした、塚本監督初の時代劇だが、相変わらず暴力とエロスがふんだんに盛られた内容となっている。剣戟のシーンは、カメラワークとカット割がかなりカッコよく、見どころと言えるだろう。
塚本監督演じる澤村次郎左衛門の風貌は、やはり監督がリスペクトする『七人の侍』の志村喬オマージュなんでしょうな。他にも黒澤オマージュがチラホラと。
また、澤村や無頼者(元ブランキーの中村達也!)と蒼井優の(文字通りの)絡みが印象的。ライティングや本人の演技のなせる技か、何とも艶っぽい蒼井優の姿を拝む事ができます。『映画秘宝』では「蒼井優史上最もエロい」と評されていたようだが、確かにその通りだと思う(笑)。
中盤以降の森と雨と霧、それらを浴びるメインキャラクターたちの描写は『KOTOKO』を思い出した。塚本監督作品の登場人物たちは、どうしてこうも、躍動感があって、それでいて生命力に満ち溢れているのだろうか…。
正直、所々芝居や演出がクドい部分はあったし、難解な所も存在したが、傑作の部類に入ると思う。
舞台は幕末だが、現代のお話としても通じるものがあると感じた。
主役3人が竹とんぼで遊ぶシーンを除けば、終始、不穏で異様な雰囲気に包まれているのが何とも…。最後の蒼井優の叫びには色々な意味が?