私には同い年の従姉妹がいる。小さい頃から従姉妹が優先されて育った。

欲しいおもちゃが被れば私が譲ってあげ、欲しい色の服が被れば私は別の色を選んだ。

親たちもそれをみて満足そうにしている。わがままな従姉妹を宥める必要がなくなるからだ。

だから私は本当に欲しいものや好きな物を買い与えられたことは一度もなかった。


ある日従姉妹は彼氏を欲しがった。

ならば作ればいいと言ったがどうやら欲しいのは私の彼氏のようだ。

従姉妹は人のものを欲しがるタチなのだ。

それは無理というと従姉妹は駄々っ子のように泣き喚き始めた。

「ヤダヤダ〜!!あれじゃなきゃやだ〜!!」

親たちは困ったようにこちらをみてくる。

まさか彼氏までよこせというのか。


従姉妹は私を罵倒しながら殴りかかってきた。今まで全て自分の思い通りだったので、従姉妹にとって欲しいものが手に入らない状況はあり得ないのだ。

私は限界が来て従姉妹に平手打ちをした。こんなクソ女に彼氏など渡せない。

従姉妹も親たちもみんなポカンとしている。まるで私が逆らうと思っていなかったようだ。

私は十数年分の不満を吐き出した。

欲しいものはみんな従姉妹に取られたこと。ずっと嫌いな色に囲まれていたこと。

私が我慢したおかげで親たちはどれだけ恩恵を受けてきたか。譲っても我慢しても一度も感謝されたことはない。

挙句の果てには彼氏までよこせと。

許せるはずがない。


吐き出した後、そのまま荷物をまとめた。

この部屋に好きなものは一つもなかったので、すぐに荷物はまとまった。

財布、通帳、印鑑、ノートパソコン、iPad、スマホ、充電器、モバイルバッテリー。

化粧品と下着や着替えが三日分。大好きなおばあちゃんからもらったスケッチブックと透明水彩絵の具。彼氏に買ってもらったプレゼント(従姉妹に見つからないように巧妙に隠していた)。

小さなスーツケースにまとめて家を出た。家族や従姉妹は何やら言っていたが全て無視した。

行く当てはなかったがとにかくこの家から遠くに行きたかった。

その日はネカフェに泊まった。電話で彼氏にこれまでの経緯を話した。彼氏は家に迎え入れてくれるようだ。

彼氏は一人暮らしでアパートに住んでいる。私の家からも距離がある。

それから私は彼氏の家で居候することになった。バイトも新しく見つけて働いた。


家を出て数ヶ月後、母から電話が来た。従姉妹の癇癪が悪化したそうだ。

私がいなくなったあとは母や従姉妹の母など他の家族がターゲットになっていたらしい。

化粧品や高いアクセサリーをねだったり盗んだり。親たちは昔から従姉妹のいいなりなので注意できなかった。

男をナンパしていたようだが、逃げられたり罵声を浴びせられたりして碌なことがなかったらしい。

それで騒動を起こして警察を呼ばれ、今警察署にいるという。


「だから、従姉妹ちゃんのためにこっちへ帰ってきてくれない?私たちじゃ手に負えないのー」

私に従姉妹の身代わりになれ、と言っているのがよくわかった。


「いい加減にしなよ。おもちゃに始まり服やコスメ、彼氏に、挙げ句の果てには人生までよこせって?ふざけんじゃないよ。」


「で、でもー、このままじゃ従姉妹ちゃんが前科ついちゃうじゃなーい、、、」


「だったらお前が被れ。もう私は限界。私はお前らのための都合のいい道具じゃない。二度と私に関わるな。次目の前に現れたら警察呼ぶから。」


「そ、そんなー、でも警察は事件にならないとー」


「お前に虐待されたっていうから大丈夫。」


「え!?ちょ、ちょっとまっ」

電話を切ろうとした時、従姉妹が電話を奪ったのか割って入った。


「いいからお前の彼氏をよこせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


すると彼氏が私のスマホを取り上げた。

「俺はお前みたいなクソ女と付き合う気はない。それどころか性格腐ってたらまともな男なんて寄ってこねぇぞ。諦めろブス女。」

そういって彼氏は電話を切った。


数ヶ月後、部屋のチャイムが鳴った。開けると従姉妹がいた。

髪は乱暴に逆毛を立てたのかぐしゃぐしゃで茶髪も相まって傷んでいるように見える。

厚塗りファンデ、太すぎる眉、丸くて濃いチーク、真っ赤なリップ、アイシャドウはピンクだが全体に塗って目が腫れて見える。

服装はフリルがついた地雷系のワンピース。太っているのでパツパツ。


「ねーねー彼氏くんもらいにきたよー!!!」


従姉妹が大きな声で叫んだ。私が止める間もなくずかずかと入っていく。彼氏が奥から出てきた。


「あー!彼くぅ〜ん!会いたかったぁー❤️」


従姉妹は彼氏にねっとり話しかけながら擦り寄っていく。触ろうとしてきた従姉妹を彼氏はパシッと振り払った。


「さわんじゃねぇよ。」


「えー?なんでー?私彼くんの彼女なんだよー?こんな地味ブス女が彼女のわけないでしょー?」


「ブスはお前だ。鏡見たことあるか?それに許可なく他人の家上がる常識のなさとか最悪。絶対にお前みたいな下品な女とは遊びでも付き合いたくねーわ。」


それを聞いて従姉妹はショックを受けたようだった。今まで親たちにはかわいいと言われて育ったので自分がブスだとは微塵も思わなかったようだ。


「そ、そんなぁ、だって私はかわいいしみんなも可愛いって言ってくれるんだよ?彼くんのためにメイクもオシャレも覚えたんだよ?主人公ちゃんだって彼くんを私にあげるって言ってたのにー」


「私はそんなこと一言も言ってないよ。あんたみたいな女には渡さないと言ったけど。」


「嘘つかないでよーくれるって言ってたじゃんねーちょーだいちょーだい」


「万が一言われても俺は絶対お前と付き合うとかありえねーから。とっとと帰れ、警察呼ぶぞ」


「えーん!!ひっどぉーい!!みんなで私をいぢめるぅー!!」


そう言って従姉妹はわざとらしく騒ぎ出した。近所じゅうに聞こえるような大声だ。

彼氏はため息をつきながら警察を呼んだ。数分後、従姉妹は不法侵入で連行された。

親たちには私のせいだとか色々言って私に罪を着せようとしていたが、彼氏が助けてくれたり親たちや従姉妹の言動から私が幼少期から精神的虐待を受けていたことが警察に知られて親たちも警察から厳重注意を受けた。

従姉妹が騒いだ時通行人が撮影していたらしく、従姉妹が騒いだり連行されているところがショート動画で拡散されていた。

これがバズりまくり、今ではネットミームになっている。


※思いつき80%創作です。昔からのもやもやした出来事が元になっています。