烈海王はツンデレか否か
以前、どこでだったかは覚えていないのですが、漫画やゲームのキャラのツンデレランキングだかなんだか、そんな感じの企画の結果発表を行っていたのを目にしたことがあります。
詳しくは忘れたのですが、一番のツンデレ、神だったかなんだったか、最上位に選ばれたのは、「グラップラー刃牙」の烈海王と「美味しんぼ」の海原雄山でした。
並み居る女性キャラを差し置いてオッサン二人がツンデレ界の二大巨頭に選ばれています。
ですが、前々から気になっていたのです。
果たして烈海王はツンデレなのかしらと。
これはあくまで個人的な考えなのですが、ツンデレというのは「主人公(あるいはその他)が本当は好きなのだけれど気位の高さその他の理由からどうしても本人の前ではツンとした態度を取ってしまうものの、どうしても気持ちを隠しきれずにその態度にどこかデレデレとした部分が出てしまうキャラ」だと思うのです。なにもわざわざそんなもんまじめに語ることもないだろと思わないでもないですが。
分りやすくたとえるなら、ここにとある柔術家がいたとします。
その柔術家が、ある日とある空手集団に喧嘩を売りにいったプロレスラーを見かけてその才能を見出して過去に殺人を犯して逃げている身にもかかわらず、その空手集団にいるうらみ連なるとある相手に煮え湯を飲ませんとそのプロレスラーに自らの技を伝授しつつ交流を深めていくものの、そのプロレスラーが件の空手集団の主催するトーナメントに出場する前日、このまま逃亡中の自分がセコンドとしてプロレスラーのそばにいたら彼に迷惑がかかると考え、でもそんな気持ちを相手に知られたくないからあえて「長田弘に失望した」だの「おまえには才がない」だのと暴言を吐き、挙句の果てに「お前が明日出場しようがしまいがそこの梶原がセコンドに就こうが就くまいが、そして勝とうが負けようが俺の知ったことではない」と言い捨て去っていったとします。
そのときはっきりと「もう会うこともない」とまで言っていたにもかかわらず、いざ大会になったらプロレスラーには内緒で、警察にはバレバレなドリアンのコスプレをして会場に登場。
プロレスラーが自分の教えた技を使ってないと知るや、その変装すらかなぐり捨てて「ク……ッ なぜ使わん……ッッ 竹宮流をッッ」と周囲に奇異な目で見られるのもお構いなしに叫び、いざプロレスラーが教えた技でヒグマを倒したら、声には出さねど、心の中で「見事なり長田ッッ 見事なり雛落としッッ」とそれはもう涙ぼろぼろ流さんばかりの喜びっぷりを表現すると──
あくまでもののたとえですが、そういうのがツンデレだと思うのですよ。なんかいろいろ途中で固有名詞出てますが、あくまでもののたとえです。ええ。
で、ツンデレ界の二大巨頭の一人、海原雄山はというと、なるほど確かに、究極対至高の最初の卵料理勝負で、最初は見事勝ち星をあげたものの、息子の悔しげな様子を見て、アラやらアタシったらなんていけないお馬鹿さん、かわいい士郎ちゃんが泣きそうになってるじゃあないのとでも思ったのでしょうか、これじゃ料理ではなく材料の良し悪しで勝負が決まるわけで第一回からいきなりそういうのはどうかなという意見に便乗してじゃあもう一回同じ材料で勝負いたしましょうべ、別に士郎がかわいそうで花を持たせてあげたいわけじゃないんだからねっ、さらに追い討ちをかけてどうしようもないくらいのダメージを与えてあげたいだけなんだらねっ、と誰が見ても明らかに息子のためにもう一勝負受けて本来なら勝ちで終わっていたのを引き分けにしたり、弟子がハンバーガー屋になるんだいと自分のもとを飛び出したときも、いろいろあっておいしいハンバーガーを作ってきたら、大量のピクルスを、べ、別にあなたの新たな出発の門出をお祝いしようと思って持ってきたんじゃないんだからねっ、たまたまたくさんピクルスがあまって邪魔だったからあなたに押し付けるだけなんだからねっ、と送りつけたり。
それはもう、ネットで「神」といわれてもしょうがないかなと納得せざるを得ないくらいの見事なツンデレっぷりです。
それに対して烈海王の場合。
確かに、初登場時は見事なまでにツンツンしています。
愚地克己に対しては中国拳法を差し置いて空手を完成させたというのを訂正しろと迫ったりその挙句にいざ対戦になったら問答無用で一撃で吹っ飛ばして戦い終わらせたり。
「バキ」になってからでも、武器を使ってきたドイルに対して「貴様は中国武術を舐めたッッ」とものすごい激怒してナイフや青龍刀で半殺しの目にあわせたりもしました。
確かに、たとえばドイル戦のとき、途中でジャックに睡眠薬打たれて一晩中眠っていた間、敵のはずのドイルがなぜか身を挺して自分を守り続けていてくれたと知ったら走り来るバイクを吹き飛ばし川の上を走り渡ってまで全速力で神心会本部まで連れて行って医者に見せその挙句ドイルが目覚めたらわざわざ手料理を作って持ってきてあげたり、たとえば擂台祭のときには毒が裏返ったバキのために13kgの砂糖水を持ってきて、バキにやさしいのねアナタったらと言われて顔を赤らめたりとデレっているところを見せています。
ですが、ここで一つ問題なのは、烈がツンツンしているのは、毎回あくまで「心の底から相手を嫌っているから」という理由からです。別に好きだけど恥ずかしくってそんなの言えないわとかそういう反動からツンツンしているわけではないのです。
実際ドイルやバキなど、相手を気に入った時は別にそこまでツンツンしていません。あくまで普通に接しています。
ですので「主人公(あるいはその他)が本当は好きなのだけれど気位の高さその他の理由からどうしても本人の前ではツンとした態度を取ってしまうものの、どうしても気持ちを隠しきれずにその態度にどこかデレデレとした部分が出てしまう」という観点で見るならやっぱり烈海王はツンデレじゃないような気がするのです。
あえて言うなら、世界に蛮勇とどろかせるために白林寺飛び出して師匠の劉海王のことなんかどうでもいいように思わせておきながら、範馬勇次郎に顔面はがされたらルールなんて無視して闘技場に飛び出し勇次郎をぼこぼこにしてやろうと怒り狂っていたところがツンデレっぽいといえばツンデレっぽいといえなくもないですが。
ただそれにしたところで、烈はあくまでハゲていた頃海王になる機会(ジーフィー)をいつまで経っても与えてくれないからそのときは牢屋をぶち破り同門の仲間たちを会うやつ片っ端からなぎ倒して師匠のもとへ行き直訴したことを抜かせば、擂台編で両者再び合間見えたときはむしろ、敬語すら使って和やかな雰囲気で会話をしていたところから察するに海王になった後は師匠に対してもツンツンした態度はとっていなかったと推測されるのでツンデレとはやはり言いがたいような気がします。
ですからアレですね。
烈はツンデレというよりも、むしろ彼独特の「烈ンデレ」とでも呼ぶべきキャラクターなんじゃないかなと、そう考えていたわけですね。
ただそれだけのネタですね。長々と書きましたが。