なんでもレビュー 第二回 六とん2
蘇部健一さんの六とん2 読了。
メフィスト作家を順位付けするなら。
1位 古処誠二
2位 蘇部健一
3位 舞城王太郎
となるくらい実は蘇部さんが好きです。
昔は一位は舞城氏、二位は清流院流水だったのですが、舞城氏のほうは、どうも、好き好き大好き超愛してるからついて行けなくなったというか膚に合わなくなったというか。
流水のほうは、木村さん殺人実験Wには感動したのですが、最近ふと「あれ……もしかしてこの人、ストーリーを紡ぐのは実はもの凄い下手なんじゃないだろうか」などとタブー中のタブーに触れてしまいランクダウン。あくまで個人的な感想ですが。
閑話休題。
そんな蘇部さんが好きになったのは、デビュー作の六枚のとんかつ を読んでからでした。
最初、それまで読んでいたメフィスト作家といえば、黒田研二氏や流水、浦賀和宏、乾くるみ女史などだったので、蘇部さんもてっきりそっち系の作家なのかと思いこんでいて、「六枚のとんかつ」などという明らかにアホなタイトルも、
「ああ……これにはきっともの凄く深い意味があるんだ……こ、この人は一体どんな仕掛けを用意したのだろう……」
と読む前から戦々恐々としていたものです。
だもので、いざ読み始めてから、そのあまりの強烈さになんというか強い衝撃を受けたのでした。
なんの臆面もなく繰り出されるくだらないギャグ。
本当にこれはプロが書いたのかと我が目を疑いたくなるへたくそな文章。
そのギャグと文章が変な融合を果たし化学反応を起こしてスパークし、気づいたらいつの間にか自分はその内容に爆笑していました。
トリックは中にパクリのやつもあるみたいですが、そもそも占星術殺人事件は読んだこともありませんし、本人も拝借したときちんと言っているし、高校の時でしたか、他人のトリックを使用することに目くじらを立てているのは日本人だけみたいなことをなにかの本で読んだこともあったので、それに関してはなんとも思ってません。
とにかく、「六とん」で大事なのは笑えるか笑えないかだと思うのですね。
まあ、それは人によりけりなのでしょうが、少なくとも自分は笑えたからそれで良し、ということで。
だから、後に本屋で文庫版を見かけた時も、普段はなんか金がもったいないからと図書館で借りて済ませる自分が「これは絶対に手に入れなければならない」と思って迷わず買ったくらいですし。
そしてそれは間違っていませんでした。「オナニー連盟」万歳。
が、そんな蘇部さんなのですが、初代六とん以降、文章力に反比例するように、だんだんと持ち味であるアホバカがなりを潜めてきたのでした。
最後に読んだのは届かぬ想い でしたが、この頃になるとすっかりアホバカは消えブラックジョーク、と言いますか、かなり方向性がダークな方面にいってしまったものです。
普通の学校は結構評判よさげなのですが、まだ書店でも見かけたことがなく未読なのですが、もう、蘇部さんは六とんのようなアホバカは書かないのだろうかと少々残念に思っていたところへ――飛び込んできたのがこの「六とん2」。
仮にも「六とん」の名を冠しているのだからまず間違いなくアホバカだろうと嬉々として手に取ったのですが……そういう期待を抱いていただけに、初代六とんの時とは違う意味で期待を裏切られました。
ある種正当な「六とん2」は最初のグループAの三本なのですが、どうやら蘇部さん、イラストトリックと申しますか、そういうものの一人者にでもなろうとしているのか、そういうイラストオチとかに力入れていて、どうも思っていたほどの強烈なギャグはあまりなく、グループB以降は六とんとは関係ないアホバカもほとんどなりを潜めた作品ばかり。
まあ、グループCの「誓いのホームラン」のオチは結構好きですが。
グループBの「読めない局面」もあのオチはなかなか上手いですし。
「地球最後の日?」のオチがいまだに分らなかったりするんですが。
ちなみに最後は今ググッたら結構あっさり答えが分りました。なるほどそういうことだったのですね。
と、それはともかく。
最近、蘇部さんって実はメフィスト作家の中では一番丁寧に「小説家」をやっている人なんじゃないかしら、思えてきました。
アホバカから脱却して、「君がくれたメロディ」みたいな上手い構成の作品とかも作ったりして。
文庫版初代六とんのあとがきで、蘇部さんは以下のようなことを言っています。
―――――――――――――――――――――――
この作品のノベルス版が出たとき、バカだ、ゴミだ、
誰にでも書ける、商品としてのレベルに達していない
などと、たくさんのご批判を頂戴した。
当時は、そういうことを言った人たちに対して殺意を
抱いたものだが、四年ぶりに読み返してみると、たしか
にこれはゴミだった。
―――――――――――――――――――――――
まさかとは思うのですが、蘇部さん、だから「もう二度とあんなゴミは生み出さない」とでも考えてアホバカはやらないようにしたのでしょうか。
まあ、ぶっちゃけた話、確かに初代六とんはゴミです。
ですが、そのゴミがたまらなく大好きな人間だっているということを忘れてほしくないものです。
例えば初代六とんをメフィスト賞に選んだ人だって、そのゴミが気に入って選んだのでしょうし、まあ、毎度アホバカばかり書けなどと思い上がったことは言う気はありませんが、せめて年に一度くらい初代六とんのような愛すべきゴミを生み出して欲しいものです。
て、ふと気がついたら、六とん2じゃなくて蘇部さん自体をレビューしているような。