⭐︎こんにちは、中学教員レモラズです。ある程度フィクションを入れて書いております。「ふーん、そんな学校もあるのね」と気軽にご覧ください。⭐︎
クラスで仕切り役をしたことで、
自分の思い通りにならない相手たちに腹を立て、
暴言暴力を始めてしまったシンジ。
シンジ母は、自分の子が悪いのも認めつつ、
「でも、話し合いに参加しない子達は、責められないの?うちの子だけ怒られるの、おかしくない?」と思ったようです。
そろそろ帰ろうとしていた、20時過ぎ。
ピンポーン
と学校のインターホンが鳴りました。
「シンジの母ですけど…担任の先生はいますか?」
イヤな予感しかしません。
「レモラズ先生、一緒に入ってもらえませんか?
」とアワアワする担任の先生。
一緒に話を聞くことになりました。
ま、訴えとしては、
うちの子ばっかり怒られるのがおかしい、
やる気がない子がいるから、うちの子がキレるんだ。
そもそもやる気がない子を注意するのは先生たちの仕事なのに、なんでうちの子がそれをしなきゃいけないのだ?
ということなんですが…
ま、お母さんからしたらそう見えますよね。
ということで、今回の流れを、もう一度説明しました。
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行事の決め事で、揉めるのはよくあること。
やる気のない人、うまく話に加われない人、やりたい人、なかなか決まらなくてイライラする人。
もちろん、態度があまりにも悪い場合は注意しますが…。
シンジくんが乱暴に
「意見がある奴いるなら、言ってこいよっ!!!意見がないなら、決めるからなっ!!!」とスタートしたところから全ては始まっていました。
もちろん、その言い方を担任は注意したけど、
小学校から暴れん坊のシンジに、みんなの信頼はありません。
みんな遠巻きに見ていました。
意見がないなら、と、シンジが動き出しました。
仕切る係に、シンジと上手に接することのできる子がいて、その子が何人かには聞いて回りましたが、
早く決めてしまいたいせっかちなシンジは、
どんどん決めてしまいました。
「おまえら、意見がないから俺が決めてやったからなっ!!!」
そんな中、
え…その役割、ヤダ…という囁きが聞こえて、
シンジは爆発。
「俺は決めようってみんなに言ってるのに、お前らが話に参加しないんじゃないか!それで文句言うなんて、勝手だ!!!」
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お母さん「たしかにそれはうちの子が良くないわ……でも先生がもっと早く介入して決めれば、うちの子がキレることはなかったんじゃ?」
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「イライラする、揉める、はよくあります。
それを通して、学級集団を作っていくのが私たちの仕事です。
もちろん教師が入れば、すぐ決まります。
でも、話し合いをする、みんなで決める、という作業は、大人になってからもよくある場面で、今練習をしてほしいのです。
今回、シンジは、リーダーをやりたいと手をあげました。私たちはそれも一つの経験だと思いました。
イライラを経験したことも、まとめることの難しさも、それぞれの気持ちの温度差を感じることも、彼にとっては学びの一つだと思います。
ていうかね、お母さん、
そんなことは、いいんです。
いっくらでも付き合います。
だけど、気に入らないからと
「殺す」「死ね」と口走り、気に入らないから相手の胸ぐらをつかむっていう、その行動が、ダメなんです。お母さんに伝えたいのは、そのことなんです。」
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お母さん「だから、そうならないように先生が入れば…」
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「今はそれで解決するかもしれません。
でも、彼が今失敗しなかったら、大人になっても同じやり方になってしまって、
それこそ彼の居場所はなくなりますよ。」
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「わかるんですけど、なんか、やる気のない子たちだって悪いのに、うちの子ばっかり悪いことにされてる気がして…」
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「お母さん、頑張ろうとしたシンジは悪くない。ただ、イライラの出し方を間違えてる。
実際、その状況で
そうなるのは
シンジくんだけで、
他の子は、そうならなかったんですよ。
それとも、
気に入らなかったから、話し合いに参加しない子がいたから、彼は暴言を吐いたり、暴力を振るうのは仕方ないという意味ですか?
それでは、ますますシンジは教室で居場所がなくなってしまいますよ。」
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母、沈黙。
そしてため息と共に
「うちの子だけなのか…」とつぶやきました。
しばらく沈黙したあと、
子育ての仕方について話すこと1時間半。
同じ話を繰り返してたけれど、
ゆっくりゆっくりお母さんなりに咀嚼してた気がします。
2時間話して、お母さん、
「ほんと来て良かった。ありがとうございます。」
と満面の笑みで帰っていかれました。