大西さんの絵で特に意識されているのは色彩と形態です。
柔らかな絵だと先述しましたが、実は色彩は強烈な印象を与えるような配置のものが多いです。フォービズムや、ゴッホが好きと仰っていたことからも鮮烈な色彩対比への趣向が見てとれました。
強い色や組み合わせを用いているのにそれが慌ただしくならずに逆に暖かな印象を与えるのが大西さんの絵の不思議なところであり持ち味でもあります。黄色を必ずどの絵の中にも用いているそうで、それが暖色系の柔らかな印象を与えているのでしょう。全体的に小さめのサイズで描いていることも関係しているかもしれません。
この絵などはシンプルですが勢いのよい筆致と相俟って補色が効果的に強調されています。
トマトを描いた絵で、タイトルは「あなたが守りたいものはずっと大切にしてね」。
厚塗りなため油絵具で描かれたように見えますがこれもアクリル絵の具です。
実はこれ、「カンヴァスをパレット代わり」にして、カンヴァスに直接チューブから絵具を盛り、大胆に描き上げているのです。大画面の絵を描くときもよくその「チューブ描き」をするそうで、最初は出した絵の具が余ってしまっていたけれど、慣れてくると最初から適量を出せるようになったそうです。笑(でもすごいことですよ!)
この絵は思い立って半ば衝動的に手の動くままに描き上げたものだそうで、自分のインスピレーションに忠実に従った結果このタイトルが付けられたのかなと思いました。
自分にとって守りたいものや大切なものを本当に大切にすることは大きな喜びだと思うのです。
この絵も一見色彩効果で劇的な絵に見えますが、実に落ち着いた作品です。騒がしくなく、穏やか。これも赤の中に黄色が使われています。
この素晴らしい色彩のセンスを、大西さんは自分で勉強して身につけたといいます。
ご自身の話では、初期の頃は色彩のセンスがなく、自分でも自覚がありそれから「色」について学ぶようになったといいます。
画面上で展開される心地よい配色はご自身の努力の賜物だということですね。その真摯な姿勢に感動しました。また色を中和させて作る過程が好きということで、楽しんで描いていることが伝わってきます。
また、形態についても非常にこだわる方で、例えば林檎を描くときは自分の理想の林檎を買ってきて、それを見たり食べたりしながら描くのだそうです。
まず理想ありきで、それを現実に即していくのだとか。「理想と現実は引き離せないもの」という考えが根底にあります。
形態はインスタレーションの方でもかなりのこだわりが見られます。
「生命力」
とても評価の高かった作品で、スペインのニューテクノロジー芸術文化センターに買い取られて、現在展示されています。
460x480x460mmと結構な大きさです。穴を覗くとLEDを用いて表された蛍の光が煌めき、人口の緑の葉と内部にそよぐ風が自然を感じさせる体験型インスタレーションです。
技術は現代の高度なテクノロジーを用いていますが、それで自然をどこまで再現できるかが大西さんの課題だそうです。主軸である「自然との調和」をどのような形で表現するかに心を砕いています。
構想には3~4ヵ月を要しました。
ほぼ立方体のこの形態は、硬質で人工のイメージを与えますが、表面の紋様の形状が自然の動き(風や波など)を感じさせます。まさになるべくしてこの形となったのでしょう。
3に続きます。