町田樹プロデュースで刑事くんが演じた「ショパンの夜に」


「絶望と向き合う青年の物語」というこのプログラムの発表を知った時からすごく楽しみでした。


刑事くんがSOIが終わったタイミングで引退発表をした時、え?引退を決めてたならなぜこのタイミング??って思いました。

SOIで引退セレモニーが用意されていた宮原さんに気をつかってくれたのかな、って思ったけど、この作品の発表を知って、プロデビューをPIWにもってきたかったんだなぁ、と思いました。


そして、これが刑事くんのプロ第一作目で本当に良かったと思いました。


町田さんのプロスケーターとしての最後の作品、「人間の条件」は、今までに他のプログラムでは見たことのないような動きがたくさん詰まったプログラムでした。

大体、フィギュアスケートのプログラムって、似たようなパターンの動きが多くて、特にショー用のプログラムだと、それがいくつか組み合わさってできているようなプログラムも多いけど、町田さんのスタイルはそれと全く逆でした。


バレエの要素をふんだんに取り入れて、プログラムは3分程度で終わるものを見せるという暗黙の了解を打ち破った、プロデビュー作「継ぐ者」は衝撃的でした。


そして、自身で演じる最後の作品になった「人間の条件」は、今思えば「ショパンの夜に」に繋がる片鱗があった気がします。


最後の作品だから、パーフェクトな演技をしたいという気持ちもあったと思うのですが、ジャンプを2本失敗してしまいます。


後に、宮本賢二さんとの対談の中で


あのプログラムのコンセプト自体が、挫折してもなお立ち上がっていく人間の尊厳をテーマにしたものですので、その2回の失敗さえも表現行為の一部になったなと思い、納得はしています。


と語っていました。


練習も十分に積んで、アプローチもスピードも十分で何も心配のいらないジャンプだったのに、失敗した。だから「これは運命なんだ」と悟って、後悔はなかったと。


今回のプログラムでは、敢えて失敗するジャンプを振付に入れています。


「ショパンの夜に」は冒頭から町田振付だなぁと思わされるプログラムでした。


そして、その演技に魅入ってしまったけど、見終わった後にはどんなジャンプが入っていたかなど、細部の記憶が吹っ飛んでしまっていました。

ただただ、すごいものを見てしまったとしか言葉が出ない。

後で映像でゆっくり見よう。(笑)


刑事くんが引退会見で次のように語っていたのが頭に残っています。


いいことが続いたのは本当に一瞬だけだったんですけど、一瞬一瞬、1年に1、2回あったくらいで、ほとんどは苦しい時間だった。でも、その中で自分が折れずにここまで滑り続けてこられたのは、これからの糧になるなと思っています。


この言葉を聞いた時、町田さんが現役時代に語っていた次の言葉を思い出しました。


スケートをしていても、つらいことばかりです。日々の練習もつらいし、試合で勝てることもたまにしかありません。でも、良いときも悪いときもフィギュアスケートと向き合って、あきらめずにコツコツと努力を続ければ、いつかいいことがあると信じられる。99%はつらいことばかりだけど、その先には、1%の光がある。99%の苦難から得られた1%の光はすごく価値があるものです。


私はこのプログラムの中に、2人の競技人生というのも重ね合わせてしまいました。


刑事くんは去年も継承プロジェクトで町田さんの過去プロ、今年も町田さんの振り付けで、独自色が出せなくなってしまうんじゃないかとちょっと杞憂してしまったのですが、刑事くんが演じることによって、刑事くんにしか出せない雰囲気を感じました。


そして、この作品を演じてくれたのが刑事くんで良かったなぁ、と思いました。



長々と自分の想いを書いてしまったけど、今回のPIWは他に紀平さんの元気な姿を見れて嬉しかったです。

オリンピックに近い時期に開催してたPIW東京に出演が決まった時は、複雑な思いになりました。怪我さえなければ、北京に出場していたはずで、年齢的にも一番ピークの合ったオリンピックだったはず。

全日本に合わせてカナダから帰国して、ギリギリまで出場することを諦めず、公式練習の欠場を決めた時はどんな思いだったかと。

それでも泣き言を一切漏らさず、出場が決まった選手達にエールを送っていた姿に胸を打たれました。

来季は怪我が治って、また日本のトップレベルに戻って来れたらいいなぁ。



この記事を読んで、改めてオリンピックにかけていた思いを知りました。



それから、トリを滑った昌磨くんの新プロはランビエールっぽい振付があちこちに散りばめられていて、すごくカッコよかったです。

4年前、振り付けたばかりのTATを披露した時は、まだ身体に馴染んでなくて、動きがギクシャクして見えたから、新プロは見れたらラッキー、でも無理しなくていいよ、後半位にはもしかしたらやってくれるかな、って位に思ってたけど、すごく難しいと言っていたプロをここまで完成して見せてくれたことに驚きました。

PIWに間に合わせる為に、どれだけ練習したんだろう。


昌磨くんのスケートもスケートに向き合う姿勢も、私は変わらずに好きです。

このスケートがある限り応援していこうと。


実は、ステファンが「楽になることはない」(笑)って言ってたプロがSPでちょっと安心しました。

フリーは一度でいいから、ノーミスが見てみたいなぁと思っていたから。宮本賢二さんに振り付けてもらう予定のフリーも楽しみです。