宇野昌磨選手の前シーズンのFP、月光を最初見た時、滑ってジャンプの印象しかなくて単調でつまらないなぁと思ってました。今までのロコへのバラードやトゥーランドットがドラマチックに盛り上がるプログラムだったので、早く来季にならないだろうか、とそんなことまで考えてしまいました。

でも、不思議なことに見るたびにどんどん印象的に残るようになって、最後にはすごく好きなプログラムになりました。
宇野選手の氷に吸い付いたような伸びるスケーティングとスピードに乗ったままスパッと飛ぶジャンプ、このプロはそんな昌磨さんの魅力を引き立てています。
曲の力を借りた派手な振り付けはなくても、スケーティングを見ているだけで魅了され、静謐な中に昌磨さんにしかできない独自の表現を感じます。

そして、このプロが印象的になったのは、試合毎にドラマを見てきたというのがあります。

初出場のNHK杯。実力からして当然優勝を期待されていたけど、SPで転倒し、もしFPでもやらかしてしまったら、まさか優勝を逃すとかもあり得るかもしれない。
そんな心配もあった中、やっぱりそこはトップ選手、フリーではミスを最小限にとどめて優勝を手にしました。

怪我をしていた全日本。フリー当日の公式練習でも、ジャンプが抜けてしまう場面がたくさん見られて、これはもう出場してもジャンプことごとく失敗するのではないかと思われました。
というか、もう棄権して欲しいと願ってました。
祈るような気持ちで見た試合本番、曲が流れて滑り出すと、序盤はジャンプにミスが出続ける。でも、中盤からは持ち直してジャンプを次々に決めていき、結果は2位以下に圧倒的な点差で優勝しました。

それから、まだ怪我の影響を引きずっていた四大陸選手権。SPで5位と出遅れ、優勝する実力がありながら、今回も難しいかもと諦め気味でした。そこから四回転を3本に構成を落としたFPで、終盤の3連続ジャンプの両足着氷以外は完璧にジャンプを降り、逆転優勝を決めました。

この月光というプログラムには、そんな復活劇のイメージが自分の中に出来上がっていきました。

残念ながら世界選手権では、その復活劇の再現を見ることは叶いませんでしたが。

終盤に向けて、ピアノの曲調が盛り上がる中で激しくステップを舞い、再び曲調が落ち着く頃、右手を天の方に伸ばして体を傾けながらすっーと滑って、そして最後を締めくくるスピンに入っていく、あの部分がとても好きで、ドラマ性を感じます。

元々、若手の選手の中ではスケーティングが良かったけど、年々、磨かれてきて、去年、リンクに近い席から生で見る機会があった時、そのスピードに圧倒されました。
同じように生で見てスピードに魅了されたスケーターにパトリック・チャンさんがいます。
高橋大輔さんが以前、自分が現役の選手の中でスケーティングが上手だと思うのはパトリックと昌磨、と言ってくれていた記事があって、私もそれに共感します。