父がいつもタバコを美味しそうに吸っていた。
「ドーナツを作って!」と催促すると
父はたばこの煙を口に貯めると
「お」の形で口を開けてほっぺをとんとんっと叩いた。
煙のドーナツができた。
タバコの煙は臭かった。
「やにが溜まる」といって時々祖母や母が天井を雑巾で拭いていた。
「ほら!」と言われた方に目をやると
ぞうきんは真っ茶色に染まっていた。
タバコは美味しいのか、汚くて臭いのか。
子ども心に不思議なものだと思った。
父が珍しく休みの日、
タバコをふかして庭木の手入れ。
吸殻をポンとなげて足でもみ消した。
よくみたら、踏んだ所が外れていた。
「火の消し忘れだよ」と教えた。
「もみ消してちょうだい」といわれて
19㎝のズックでもみ消そうとしたけど
手に取ってじっと見てみた。
赤い光がちかちか光った。
「吸ってみていい?」
父は笑いながら「吸ってみてもいいよ」と
(やれるはずはない)という風に言って
そのまま庭木の手入れを続けた。
私はじっとみてちょっとだけ口をつけて
スー――――っと吸った
脳に、口に、いきなりパンチくらった
おえーーーーゲボゲボ
(≧◇≦)
慌てて父がもどって
「おい!こら!本当に吸ったのか」と慌てる
見つけた母が
「お父さんったら!!変なこと言ったんでしょうに!!」といって父を叱る。
開き直ったのか父は
「間違って吸ったら、生涯タバコを吸うまい」とか何とか云ってみる。
全く説得力なし。
しばらく咳き込んで 父に言った
「っっこ、こんなの! おとうさんいじわるだ!!!!」
父は私と母に謝った・・・・・・・・当然である。
私がタバコを吸った日
それ以来タバコというものが大嫌いになった。
そして、タバコが体に害だと知ったのはだいぶ後の事だった。
我が家の男性陣は全員タバコを止めた。
いまとなってはタバコ自体が懐かしい思い出。