一部不通の米坂線、新潟県知事「JRによる復旧・運営を」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

山形知事、一部不通の米坂線「JRによる復旧・運営を」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

2022年8月豪雨で被災したJR東日本米坂線について、新潟県と山形県の両知事は「JR単独での復旧が望ましい」という見解を示した。

 

私は、新潟県側はそのスタンスで当然だと思うが、まさか山形県までそのスタンスを取るとは思わなかった。というのも、米坂線の新潟県側は利用者が著しく少なく、あっという間に山形県に抜けていく区間のため、新潟県が復旧費用を出すメリットがほぼ無いからである。米坂線は山形県がメインの路線である。

にもかかわらず、山形県の知事は新潟県と同じ発言をした。

 

米坂線は現在、今泉駅から坂町駅までの区間が不通となっている。米坂線で利用者が比較的多い米沢駅から今泉駅までの区間だけが残っている。山形県としては、米沢~今泉の区間さえあれば良いのだろうか。

 

JR単独の復旧を求める理由として、両知事は「地方創生」というワードを挙げたうえで、公共交通機関としての自覚を持ってほしいという趣旨の発言をしていた。私はどうもこの発言に賛成できない。

 

まず、地方創生について。現在の日本では少子高齢化により、労働力が不足している。今後もその流れは続く。地方創生には労働力が必要だが、人口減少時代の今となってはその確保が困難である。また、都市部でも人手不足が深刻なところもあり、とても地方に人的資源を配分するゆとりなどない。少子高齢化を食い止めることができない限り、地方創生(多極分散)は諦めてむしろ多極集中を促すしかない。

 

そして、公共交通機関としての自覚という点だが、JR東日本は民間企業である。そもそも、民間企業が公共物を維持する義務などない。また、民間企業というのは利潤追求をしないと会社を維持できない。公企業のように、市民から強制的にお金を巻き上げることが不可能だからである。そんな民間企業が赤字部門を切り捨てるなんて当然の話である。どうしても鉄路を維持したいなら、JRに頼るのではなく自分たちで運営すべきだ。赤字路線に共通して言えることは、そもそもJRに頼ることが間違っているということをいい加減認識すべきである。

 

また、本当に山形県と新潟県(特に山形県)が米坂線を必要としているのかすら怪しい。本当に必要なら、少しは費用負担をしたがるはずだ。鉄道が廃線になることによって、魅力度が下がることを危惧しているのだろうか。

その心配はご無用だ。何故なら、鉄道の廃線によって地域が廃れるのではなく、地域が衰退した結果、鉄道が消えるのである。つまり、鉄道の存廃が議論されている時点でもうその地域は衰退の一途を辿っている証拠である。実は、東京都内にも赤字路線は存在するが、地域が元気いっぱいだから廃止されずに残っているのである。西武鉄道の赤字路線は、2014年に株主が廃止を要求したものの、西武鉄道がその要望を棄却している。地域が元気なら、鉄道会社は赤字でもその路線を自力で維持しようと頑張ってくれる。あのJRですら、そのような赤字路線を多数持っており、場所によってはイベントを主催している。民間企業とは思えない素晴らしい会社からなる業界、それが鉄道業界だ。

 

かつて米坂線を走っていたキハE120形。現在は只見線を走っている。只見線の復旧の際には、福島県が線路を維持し、JRは列車を運行する上下分離方式という条件付きで廃線を回避した。米坂線においても、上下分離方式か自治体による復旧費用の一部負担を行わない限り、廃止を避けることはできないだろう。