はじめに

 

本日は金曜日ということで、京葉線のダイヤ改正から1週間が経とうとしている。今週は祝日があったとはいえ、慣れないダイヤで4日間通勤・通学するのは非常に大変だっただろう。1週間ご苦労様である。

 

沿線自治体は引き続き、京葉線の通勤快速復活をJR東日本に要望していくとしているが、残念ながらその要望が実現するとは思えない。その理由について、見ていこう。私は単なる鉄オタであり、有識者ではない。その点をご理解の上、お読み頂きたい。

 

葛西臨海公園駅に入線する京葉線

 

 JR東日本は職住近接を促したい

高度経済成長期に、首都圏の人口が急増したが、これに対し旧国鉄は通勤五方面作戦という改革を行った。五方面とは、東海道線・総武線・常磐線・東北線・中央線のことである。これらの路線において、列車本数と線路の本数を増やし、輸送力を増強することにより、通勤による鉄道需要を引き起こし、国鉄の経営を安定させようとしたのだ。そのときに快速列車の本数も増やし、遠近分離が図られた。当時の国鉄としては、遠距離通勤者は大歓迎という姿勢だった。

今のJR東日本はどうだろうか。そもそも今の日本は、政府の想像を大きく上回るほど深刻な人口減少社会であり、地方都市の消滅が現実味を帯びている。さらに、生産年齢人口の減少によって、今後ますます通勤利用者が減少すると考えられる。

通勤路線というのは、朝・夕の客単価の安い人たちによって異常なほど混雑する時間帯のために、大量の車両と長いホームが用意されている。通勤利用者が少なくなるのなら、長い列車を走らせれば走らせるほど電気代の無駄遣いとなる。また、長い列車が走ることにより、線路設備の摩耗も速くなるため、メンテナンス費用も大きくなる。

JR東日本は京葉線を各駅停車化することにより、東京への通勤利用者の居住地を京葉線内で完結させ、最終的には内房線や外房線への直通運転も廃止あるいは短距離化したいのではないだろうか。特に、外房線は上総一ノ宮駅まで10両で走るのには勿体なく見えてしまう。

 

上総一ノ宮駅で並ぶ総武線と京葉線の車両

 

 

 JR東日本のパワーの衰え

ここ最近、JR東日本の不祥事が頻発している。直近では、横須賀線のトンネルが崩落したり、東北新幹線でオーバーランと設備故障が発生した。東北新幹線のオーバーランは雪による影響のため、天災と言えるかもしれないが、設備故障と横須賀線のトンネル崩落はれっきとした人災である。人手不足によって鉄道現場が疲弊しているのだろうか。もしそうであるなら、現存する鉄路を全て維持することなどもってのほかで、利用者の少ない路線を積極的に廃止していく必要がある。路線を廃止するとその地域の人が困るといった声は上がるが、その地域の人が都市部に移住してくれさえすれば、何の文句も言いようがないだろう。

房総半島には久留里線という閑散路線があるが、この末端部は既にJR側が廃止の要望を沿線に出している。しかし、JRとしては、久留里線全線と、内房線の末端部(館山~安房鴨川)を廃止にしたいのが本音ではないだろうか。中途半端に利用者が多いと、廃線の要望を出すことは不可能であるが、輸送密度が100を下回っていれば、あっさりと廃線の要望を出すことができる。

京葉線の通勤快速を廃止にすることで、房総半島をコンパクトシティ化しようという狙いがありそうだ。というのも、千葉県内の鉄道は房総半島を1周するように線路が敷かれており、その先の大都市はない。赤字路線の整理がやりやすい環境にあるのだ。

 

房総半島どころか関東屈指の大赤字路線、久留里線

 

 

 

 職住近接は利用者・勤め先の会社にとってもメリットが大きい

鉄道を趣味としている私でさえも、遠距離の通勤・通学は嫌である。そのため、電車だけで1時間以上かけて通勤している人は化け物に見えてしまう。遠距離通勤を選ぶ理由としては、やはり自然が多く景色の良いところで暮らしたいというのが大きいだろう。しかし、よく考えてみてほしい。朝起きてから会社・学校に行くまでの間、綺麗な景色に見とれている暇はあるだろうか。急いで朝食を食べ、足早に駅に向かいながら、美しい景色に見とれることができる万能な人間はどのくらいいるのだろうか。ほとんどいないだろう。そして、仕事を終えて帰宅する頃、地元の景色はどうなっているだろうか。真っ暗である。そのため、美しい景色を見ることができるのは、土日と祝日のみとなる。週にたった数日間見る景色のためだけに、大きな犠牲が伴っていることを自覚すべきである。

東京都心にある同じ会社に勤めているAさんとBさんがおり、Aさんは電車だけで片道90分の遠距離通勤で、Bさんは電車は片道30分で、最寄り駅と自宅は自転車で片道20分の通勤であり、両者ともに始業と終業の時刻は同じとしよう。すると、24時間から睡眠時間・勤務時間・移動時間を引いた残りの時間、すなわち自由時間はBさんの方が多い。これは、通勤者にとってのメリットである。また、東京都心から電車で30分というのは、大した距離ではないことが多い。東京都内は駅間距離が短く、時間の割に進んでいないため、運賃は高く付かない。一方、30分を超えると駅間距離が開き始め、あっという間に運賃が高くなる。これは、通勤手当を支給する会社にしてみれば、あまり美味しい話ではない。このように、遠距離通勤は利用者と会社共にそれなりの犠牲が伴っている。京葉線の通勤快速が廃止になった今、その犠牲を払ってまで遠距離通勤に固執する意味はあるのだろうか。

 

職住近接の街、松戸

 

 JR東日本の方針に反対するだけ無駄

これが最後の理由となる。

皆さんは覚えているだろうか。山手線・京浜東北線の高輪ゲートウェイ駅の駅名をめぐる騒動を。あのときJR東日本は、駅名の一般公募を受け付けたものの、6人しか提案していなかった「高輪ゲートウェイ」が採用された。この6人もどのような人たちなのかは具体的には明らかにされておらず、私はJR東日本の社員が会社からの圧力で応募したと見ている。皆さんはどう思うだろうか。ちなみに私は、その一般公募で「新品川高輪」と書いた。高輪にある品川新駅という意味が込められている。新函館北斗を意識した。

新駅の駅名が高輪ゲートウェイであると発表された途端、インターネット上を中心に炎上する騒ぎとなった。著名人も反対意見を述べていた。大炎上しても、JR東日本は高輪ゲートウェイ駅の名で2020年に新駅を開業させた。JR東日本というのはそういう会社である。外部の人間の声など聞かないのである。その割に、赤字路線廃止反対派の声には耳を傾けるのが不自然ではあるが。

 

一際目立つ横文字

 

 

 おわりに

鉄道マニアである私でさえも、遠距離通勤はとても推奨できない。通勤時の電車は、楽しい所との行き来に使う電車とはまるで別の乗り物なのだから。京葉線の通勤快速廃止を機に、ライフスタイルに支障を来さない通勤を模索してみてはどうだろうか。綺麗な景色が見たいのであれば、休日にお出かけすれば良い。JR東日本には休日おでかけパスや週末パスといったお得な切符がある。それらを使ってお出かけすれば良い。住んでしまえばそこしか行きようがなくなってしまうが、住まなければ景色の選択肢は色々あるはずだ。最後に、日帰りでも行ける良い景色を紹介する。もちろん宿泊した方が圧倒的に楽であるから、皆さんには宿泊を推奨する。(私は単純にホテルの予約を億劫がり、これらの場所には日帰りで行ってきた。)

 

伊豆半島にある大室山

 

アタミロープウェイの山頂駅からの眺望

 

ひたちなか開運鐵道神社

 

鋸山からの景色

 

東京都23区とは思えない等々力渓谷(倒木により当面の間立ち入り不可)

 

仙台市営地下鉄東西線の国際センター駅。緑の中を地下鉄が走る。

 

十国峠

 

宝登山ロープウェイ山頂駅からの眺望

 

伊豆半島にある小室山

 

伊東駅からすぐの海水浴場

 

伊東温泉いでゆ橋。見えているレトロな建物は東海館。

 

御岳山

 

丹沢大山