はじめに

 

 

新型コロナウイルス感染症の影響で、首都圏でも一部路線で終電の繰り上げが見られた。

 

新型コロナウイルス感染症は、社会情勢的にはもう収束に近くなっているが、それでも繰り上がった終電が元どおりになる兆しはない。その証拠に、今年の春のダイヤ改正では、上越新幹線の終電が繰り上げられる。

JR東日本 ダイヤ改正2024 上越新幹線終電繰り上げへ なぜ | NHK

 

新型コロナウイルス感染症が社会情勢的に落ち着いているのにも関わらず、終電の繰り上げが実施されるということは、終電の繰り上げが鉄道会社にとってメリットが大きいと考えられる。今回は、鉄道ド素人の私なりに終電繰り上げのメリットを考えてみたい。

 

 ①保線作業にゆとりができる

鉄道車両というのは言うまでもなく重い。空っぽの状態で走るだけでもそれなりの負荷が線路にかかる。私はガリガリなので、体重が50kgに満たないが、鉄道利用者の大半が体重50kgはあるはずだ。すると、乗客がたった20人であったとしても、1トンの重さがプラスされるのだ。そのような列車が1日に何本も走れば、ありとあらゆる設備が摩耗することは容易に想像できるだろう。そのため、鉄道にはメンテナンスの仕事が必要不可欠であり、それを行っているのが保線作業員の皆様である。保線作業の計画を立てることは、列車が走っている時間でも可能だが、実際の作業は列車が走っていないわずかな時間で行うことになる。終電を繰り上げることにより、作業時間が増える。時間にゆとりができることで、ミスや遅れのリスクを軽減できる。

 

 

 ②駅員や乗務員の仮眠時間が増える

最終列車が終わってから翌朝の始発列車に向けて動き出すまでの間、勤務中の駅員や乗務員は仮眠を取っている。翌朝、初電のために起きる時間が変わらないのなら、終電が早ければそれだけ多くの睡眠時間を確保できるということだ。少なくとも、寝不足であるよりは、ある程度の時間眠れた方が、安全性は上がる。朝の通勤時間帯は多くの人の命を預かることになるのだから、仮眠と言わず十分な睡眠を現場に与えるべきではないだろうか。

 

 

 ③無茶な残業や飲酒に粛清を促せる

これは、鉄道員以外にとってもメリットなのではないか。私が終電の繰り上げに反対しない理由がまさにこれである。

電車が遅くまで走っているが故に、ギリギリまで残業したり、酒を飲みまくってしまうこともあるだろう。日本人は、遅くまで残業している割にはドイツよりも成果を出せていないことが、先日露呈した。働きすぎて、仕事の質が下がってしまっているのではないか。ギリギリまでお酒を飲み続けたことにより、駅のホームや道端で粗相する馬鹿者も何と多いことか。

終電の更なる繰り上げにより、ある意味強制的に帰宅を促すことができる。過度な残業も過度な飲酒も、心身共に悪影響を及ぼすため、止めた方が良い。電〇のように、タクシー代を社員に支払ってでも、長時間労働をさせたい会社もあるが、大抵の会社はそんな余計な出費はしたくないだろう。

 

 

 おわりに

物流2024年問題により、路線バスでは減便が相次いだが、生産年齢人口が減少している今、鉄道も人手不足であろう。テクノロジーの進歩により、運行はもちろんのこと、メンテナンスまで自動化され、鉄道の24時間運行が可能な時代がやってくる可能性も否定はできない。しかし、仮にテクノロジーがそれだけ進歩したとしても、③の理由や環境面を考えれば、終電の繰り下げや24時間運行は絶対に行うべきではない。そもそも、それだけテクノロジーが進歩すれば、遅い時間の鉄道が必要になるほど長く働く必要などないはずである。