⓪目次

①はじめに

②保存することの重要性

③保存場所をどうするか

④費用問題の解決

⑤おわりに

 

 

 ①はじめに

 

 

皆さんは、鉄道関連の博物館に行ったことがあるだろか。私はこれまで鉄道博物館(JR東日本)に4回、リニア鉄道館(JR東海)に1回、東武博物館に4回(そのうちの1回は物心ついていなかったので実質3回)、地下鉄博物館(東京メトロ)に3回行ったことがある。その博物館には引退した車両や、かつて使われていた道具が保存されている。私は2000年代生まれであるから、当然ながらそれよりも前に引退した車両には乗ったことがない。博物館は全ての形式を網羅しているわけではないため、ほとんど古い車両を生で見た経験は無いに等しく、何だか寂しく感じてしまう。また、博物館に行って感じたのは、これ以上引退車両を受け入れようとすれば、既存の保存車両が犠牲になるのは避けられないということである。

そこで今回は、引退車両を保存するという土地活用について提案させて頂く。ちなみにこの趣旨の内容は、多くの鉄道会社・局の問い合わせフォームに送信し、回答を受け取っている。返信内容の二次利用は禁止されているので、インターネット上に限らず私が家族も含めて第三者に口外することはない。

 

 

 ②保存することの重要性

 

インターネットというのは素晴らしく、私が生まれる前に撮影された映像や画像がいくつも残っている。しかし、それらだけで得られる情報は少ない。画像で得られるのは視覚情報のみで、動画では辛うじて聴覚情報も得られる。しかし、昔のカメラというのは今のカメラほど画質も音質も良くないため、残された実物を見ることに勝るものはない。歴史という科目を振り返ってほしい。私は現在大学生であるが、歴史の教科書に書かれている遺物の名前を言われても、それがどのような物なのかはピンと来ない。何故なら歴史の教科書に掲載されている遺物のほとんどを生で見たことがないからである。さすがに原爆ドームとか、赤紙はピンと来るが。

鉄道なんてどうでも良いじゃん!と思っている方にはこの気持ちはおわかり頂けないだろう。しかし、狩猟採集中心の生活から、今日のようなテクノロジーに囲まれた生活にまで人類が発展してこれた理由を考えれば、モノを後世に残すことの重要性は多少は理解できるのではないだろうか。人類は過去の人々が残した記録をヒントに物事を前に進めてきた。この先何十年か経過した後の世界というのは、現在では想像もできない状態となっているだろう。これは鉄道に限ったことではないが、鉄道も時代の変化に順応していく必要がある。しかし、遺物をヒントにしない限り新たなアイデアを生み出すことは不可能だろう。突然ずば抜けたアイデアが浮かぶこともあるかもしれないが、その場合も遺物を捨てる理由などない。ちなみに私はこのブログのタイトルには一切鉄道というワードを入れていない。つまり、バスでも飛行機でも船舶でも同じであるということだ。

 

このトピックの最後に思考実験をしてみようと思う。鉄道マニアの方は、自分が非鉄であると仮定して頂きたい。以下に何枚か車両の写真を載せる。写真の下には所属会社名と形式が書かれている。まずこれらの写真と付属情報をご覧いただきたい。写真は全て私が撮影したものであるため、下手くそである。

 

東武鉄道500系リバティ

 

JR東日本651系(引退済)

 

ひたちなか海浜鉄道ミキ300形

 

舞浜リゾートラインType C(100形)

 

キリがないのでこのあたりにしておこう。では1週間後に写真を見ただけで何系か言えるかどうか考えて頂きたい。その1週間は学校の勉強のように定期的な復習は行わないものとする。

 

恐らくこれは、鉄道マニアである私でも、生で見たことがなければ、顔と形式が一致しないと思う。そう言える根拠となる体験談がある。私は昨年に初めて西武鉄道に乗ったのだが、乗る前からどんな顔の電車がいるのかについてはわかっていた。しかし、どの顔が何系なのかは覚えていなかった。しかし、実際に乗ってみたり、走っている様子を生で見ただけで、そのモヤモヤが解消された。その記憶は半年ぶりに西武鉄道に乗車するときまで消えなかった。そして私の長期記憶となったのだ。

 

長々と書いてしまったが、要するに実物を見ることが大切である!それだけだ。

 

 

 ③保存場所をどうするか

車両の保存が容易でないことは容易に想像できる。一番の問題は、保存場所の確保である。車両基地に置けるならそれが一番良いが、車両基地には旅客用の車両だけではなく、保線車両も置いてある。そのため、引退車両を保存するためのスペースは多くは無い。鉄道系の博物館に保存するというアイデアも出したくはなるが、前述のとおり博物館にこれ以上車両を置けそうなスペースがない。そうなると、場所の確保が最大の問題となる。また、場所が決まったとしても運搬費用がかさむ。

まず、場所についての問題の解決策を考えたい。こだわりが無ければ、鉄道車両を保存するスペースはいくらでもある。駅前広場や、公園の敷地などである。病院の敷地に保存された事例もあるが、これについては費用面での解決策と一緒に後述する。

現在の日本では、少子高齢化が急速に進行している。それに伴い、空き家の数が増えている。

知っておきたい『日本の空き家問題』の現状とは?!|賃貸経営|土地や資産承継のお悩みに応える土地活用ナビ|賃貸経営・土地活用なら大東建託 (kentaku.co.jp)

空き家を解体して、アパートを建てたり、駐車場にして土地を活用するというのが一般的な解決策だろう。しかし、日本は人口が減少しているのにも関わらず、都市部の人口は増えている。確かに都市部ならアパートを建てれば重宝するが、都市部ではない場合、それがかえって負の遺産となるリスクを伴う。また、都市部への人口流入に伴い、車離れが進んでおり、駐車場にしたところで土地を有効利用できるかどうかは怪しい。

車離れが分かるデータ・理由と原因・若者が多いのか|地方 - ドライブノウハウをつけるならCarby (b-engineer.co.jp)

アパートにも駐車場にもできないのであれば、その土地を鉄道車両の保存スペースとするのはいかがだろうか。過疎地域の場合、鉄道車両が保存されている場所が存在することが一種の町おこしになるのではないか。

 

 

 ④費用問題の解決

タイトルにも掲げたが、クラウドファンディングを活用するしかないと考える。というのも、鉄道車両の保存場所確保と、保存場所までの運搬には高額な費用がかかる。そのせいで、鉄道会社というのは車両の保存に消極的なところが多い。考えてみればそれは当たり前のことだ。はっきり言ってしまえば、鉄道というのはマニアなんかいなくても成り立つ。というか最近は鉄道マニア、特に撮り鉄によるトラブルが相次いでおり、鉄道マニアというのは鉄道会社のみならず世間全体から邪魔者扱いされている。この現状では少なくとも鉄道会社が費用を負担してまで、鉄道マニアを喜ばせようという発想には至らないだろう。そうなってしまえば、車両の保存を実現させるためには、クラウドファンディングを活用するしかない。実はクラウドファンディングを活用した車両保存には成功例がある。

クラウドファンディングを活用した車両保存の成功例として、東京さつきホスピタルに保存されている東急8500系である。保存されると聞いたときは本当に喜んだ。それと同時に今後もこのような取り組みを各地で行うべきだと感じた。

東急8500系車両の公開日につきまして – 【公式】特定医療法人社団研精会 東京さつきホスピタル (tokyo-satsuki.jp)

 

また、鉄道会社自らがクラウドファンディングを呼びかけた事例もある。

『キハ28-2346号車』保存プロジェクト~車両保存&3Dデータ化~【始動】します! | いすみ鉄道公式ウェブサイト (isumirail.co.jp)

いすみ鉄道のキハ28-2346は、無事に国吉駅で保存されている。いすみ鉄道は利用者が少なく、保存費用を100%自己負担できるような経営状態ではないため、このクラウドファンディングは成功したと考えられる。

レトロ車両 キハ28 つり上げ回転 いすみ鉄道国吉駅 “第二の人生”は運転体験線 | 千葉日報オンライン (chibanippo.co.jp)

 

 

 ⑤おわりに

車両を残すことは、単純に私のようなマニアのためだけなのではなく、これからの未来を切り開く上で過去が重要なヒントになり得ることと、車両に限らず実物に触れた経験に勝るものはないということを皆さんに伝えたくてこの記事を作成したのだが、果たして上手く伝わっただろうか。クラウドファンディングが成功すれば、新型コロナウイルス感染症の爪痕が残っているが故に厳しい経営を強いられている交通事業者を苦しめることなく、大切な車両を保存することができる。都市部への一極集中で、地方都市は縮小傾向にあるが、懐かしの鉄道車両を保存しておくことで、新たな観光需要を生むべきではないだろうか。もちろん、ただ置いてあるだけでは鉄道マニアしかやって来ないが、かつて渋谷駅前に存在した青ガエルのように車両内部を活用したイベントを催すのも良いかもしれない。