母という人 つづき
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父が亡くなり、
父の借金だらけの財産を放棄するための手続きをしなければならなかった。
母は、
大阪に来て私に
父の死を打ち明けたあと、
こんなことを言っていた。
「一年ほど前だったかしら、
私が木の剪定をしていると、
話しかけてくる人がいたのよぉ。
その人、私に、
「そうやって剪定するものなんですねぇ・・・」って、
とにかく話しかけてくるの。」
「私、見かけない人だし、
誰か判らなかったのよ・・。」
「顔を見ても判らなかったの？」
「・・もうお互い年をとったからね。
ずいぶん会ってなかったし・・・。
あの人、頭も髪の毛がなくなっていたわ・・・。」
「でも
もしからしたら・・っと
思って、
お姉さんが来たとき聞いてみたのよ。
そしたら、
お姉さんも もしかしたら
その人そうかもしれないって・・・」
そう話してくれた。
母の顔は、
キヨサトさんの大変だったであろう
人生の最期を慮った刹那さと、
心なしか、
ほっとしたというような安堵の表情が
入り混じっていたように思う。
キヨサトさんのお姉さんの話によると、
その頃のキヨサトさんは、
お姉さんの家にお世話になっており、
母と父が育ったこの町に
いたそうだ。
そして、わたしの実家の近くにある
高校のサッカー部の練習風景を
見に行くといって、
よく散歩に出かけて行ったらしい。
この話を聞いて、
私は涙がこみ上げた。
最後に彼は、
母のことを訪ねてくれたのかもしれない。
ずっと、
待っていた
母のところへ。
もう真実を確かめる術はない、
けれど、
私は、
はじめて父を許せた氣がした。
この間の
母の誕生日、
父に代わって母へ、
愛をこめて花束を贈った。
真っ赤なバラの花束を・・・。
わたしがわたしを大好きになる日まで『母へ贈る。〜真っ赤なバラの花束を〜』完
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