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    父の死

 

 

 

 それは無機質な血の通わない作業だった。

 

この日、私は父の名をはじめて知った。

 

「キ・ヨ・サ・ト・・・」

 

そして彼の名を相続放棄申述書の被相続人の欄に書くことになった。

 

まさかこんなかたちで…   

 

父の名を書かなければならない日が来るとは、夢にも思わなかった。

 

彼は今、あちらで何を思うのか・・・。

  

 

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相続放棄申述書

 

   **家庭裁判所  **支部御中

 

被相続人  本籍      長野県**市***番地

最後の住所   長野県***郡**村大字**番地***

氏名(フリガナ)   **靜郷(*****)*********

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死亡時の職業     無職   平成21年8月21日死亡

 

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 十月の二十三日  母が訪れた。

 

久しぶりに会って15分もしたころ

 

狭い店内にカウンターと四つ程のテーブル

 

その一番奥の席について

 

向かい合って座り 注文し終えたころ、

 

 彼女が口にした。

 

 

 

「あんた達のおとうさんがなくなったの」