鉄と汗と誇りの記録
20代前半のある日の事
義理の叔父からの紹介で
足を踏み入れたのは
JFE福山支店旧社名は
日本鋼管福山製鉄所
鉄と向き合う日々が
ここから始まりました
北九州に本社を持つ
協力会社に所属しての
365日稼働の製鉄所
12時間の交代制勤務へ
仕事は列車の命とも
言えるレールの製造現場
熱処理工程を担う部署
レール製造は世界でも
JFEと日本鋼管が独占
ローカル線から新幹線
海外鉱山鉄道まで対応
形状、長さ、重さも多種
新幹線では技術進化で
1500m級のロング
レールが敷設される時代
現場で先ず驚いたのは
建屋のスケールの巨大さ
長さ200m幅30mの
建物が4棟並ぶ鉄の要塞
私はレールの両端を炉で
焼入れ、冷却、焼き戻し
熱処理工程に配属された
真夏の工場はサウナ状態
熱気ムンムンで音は爆音
耳栓なしでは鼓膜が危険
ヘルメットに耳栓が定番
レール継ぎ目の摩耗防止
両端の熱処理が主な業務
別部署はカーブや駅構内
レールヘッド全体を処理
熱処理で湾曲するレール
少量の水で形状を調整
検査薬で焼入れの痕跡が
扇形に浮かぶ”鉄の花”
その美しさと精密さに
思わず見惚れた瞬間も
湾曲レールは職人の技で
スチームプレスで修正
数ミリ単位の歪みを見て
左右のプレス機で微調整
直線に戻すその技術は
正に神業と呼ぶに等しい
特殊勤務で給料も良く
22歳でセリカを購入
鉄の汗が車に変わった
バブルの波に乗った瞬間
5年余りの勤務の中で
QC発表なでも体験し
今振り返ればぞの熱気と
騒音と達成感は青春の証
先日YOUTUBEで
違う現場の映像を放送
「俺、ここにいたんだ」
呟いた瞬間胸が熱くなる
鉄は熱いうちに打てと
ぞの頃の自分も熱かった
そして今もその記憶は
心の奥で静かに燃えて
未だに消える事はない