吾輩は犬のヨーキーである。
名前はチビタ。この名は、吾輩の身体が小さいことと、当時流行っていた漫画の「おそ松くん」に登場するおでん好きの「チビ太」から盗用されたという節がある。
吾輩が店頭に並べられていた時、一目で気に入ってくれ、家に連れ帰ってくれた、今のご主人が付けてくれた名前である。
小さい時、吾輩はぺろぺろ何でも舐める癖があったので、危うく「ペロタ」という実に俗悪で滑稽な名前にされるところであった。
チビタも決して良い名前とは思わないが、人前で大きな声で「ペロタ」などと呼ばれたら、気恥ずかしくて犬仲間に顔を向けられない。聞くところによると、吾輩の祖父は英国で○○ドッグ賞をとったこともある名門の出だそうである。その子孫である吾輩がそれでは、血統書に傷が付くというものである。
今、吾輩は17歳、人間の歳に換算すると何と84歳とのことである。
確かに眼は霞んで殆ど見えず、耳も遠くなり、足腰も大分弱くなってしまった。ただ、鼻だけは何とか利き、気持ちも昔と変わらないのだが、身体がついていかないだけである。
今や、雄犬の尊厳である片足を高々と上げてマーキングすることも儘ならず、雌犬と同様、自然体で用を足す毎日である。
最近、ご主人の連れ合いが吾輩を題材に「チビタンのうちゅうりょこう」なる絵本を出版したらしい。吾輩は眼が不自由になってしまったので見てはいないが、どうせロクでもないものだろう。少しはジェントルマンに描いてくれたのであろうか、気になるところである。